誰もが想像できるのが、年齢と病。
その年齢も定年といった観念がないので、自分で決めることになる。
年齢とともに税理士事務所を、運営可能な規模の縮小していく例も多い。
このケースではほとんどの税理士が、”死ぬまで税理士”を続ける。
なかには、一部の顧客を他の税理士に譲る人もいるので、これも一つの事業承継。
この場合には、同じ支部の親交のある税理士に引き継ぐことが多い。
先日も50歳の先生と60代半ばの先生が共同事務所を立ち上げたが、これも同じ支部。
ただし、60代の先生は”死ぬまで税理士”の考えはなく、承継できたら引退を決めている。
ですから、年齢による承継の時期に関して、実のところ平均年齢は意味がない。
なかには、「何歳ぐらいが承継の適齢期?」といった質問をされるが、答えはナシ。
ご自身が決めた時が、引退の適齢期であるわけだ。
ところが、病となると、時間は待ってくれない。
資格者である先生が病に倒れ、数年間にも現場に出られず、判断もできない状態が続く。
税務署からの調査も入り、「承継する必要がある」と指摘されるケースも出ている。
不治の病であれば、その判断もできるのだが、完治の可能性も残される場合には判断も迷う。
医療の高度発展化で、不治の病も完治する例が出てきているので、一概にダメとは言えない。
しかし、適切な判断ができない状態で税理士業務を継続することは、実は法律に違反する。
経営者の家族や従業員の生活を考えると、簡単にその判断はできない。
特に長期療養が必要な場合は、判断に迷うことになる。
仕事を辞めることにより、精神的な問題もあるので、そう簡単に資格返上というわけにもいかない。
病による事業承継案件は、実のところ、緊急を要するものが多い。これは年齢に関係なし。
脳溢血で倒れ、再起不能。ガンで数か月の命。多くの事例を経験した。
病人の看護をするためには、家族が事務所を運営することもできず、顧問先にも迷惑をかける。
職員の不安も募り、中には退職していく人も。こうなる前に事業承継を決める例が多い。
当然のように思われるかもしれないが、事業承継の相手を家族が捜すのはなかなかできない。
支部に頼むのが一番と考えているが、その場合家族への保障はあるのか、素直には聞けない。
同業者に事務所の実情を洗いざらい話すことも、引っかかるものがあり、動き出せない。
しかし、そんなことを言っていられない緊急を要する場合、弊社に駈け込まれるケースがある。
最短で事業承継をまとめたのが、実に1週間。契約成立の3日後に先生は他界された。
事業承継後、事務所は名前は変わったがお客さんも減ることなく、家族も従業員として勤務。
亡くなられた先生の年齢は50歳。病に年齢は勝てません。
事業承継支援室長
大滝二三男