20年ほど前、税理士事務所経営に関するセミナーを企画したことがあります。
定員50名で、成長著しい税理士が、その成長の秘密を披露するセミナーでした。
セミナー事務局では、企画発表後直ちに満席になると期待をしていました。
しかし、申し込みの電話はほとんどなく、数週間が過ぎました。
結果、セミナーに出席したのは10人にも満ちませんでした。
意欲満々だった40代後半の先生も、「同業者の話には、耳を傾けないのかな」との感想。
セミナー終了後、その成長のノウハウを話し終えた講師と名刺交換をした参加者は半数のみ。
他人の成功の話など聞きたくもないのか、一時間半の公演中に居眠りをする受講者も。
講師自らも、居眠りをしていた先生も数人いたね、とがっかりの様子。
結論は、税理士は事務所の経営に関して、自己流が一番。他人の話を聞く耳なし。
ところが、事業承継の依頼が来る先生方は、自分の事務所の評価は遠慮気味。
一番良かった時期のことを話すときは生き生きとし、現状には反省することも多い。
他の事務所の経営手法などを同業者に訊くことは、良しとしなかった人がほとんど。
さらに事務所から巣立っていった税理士とも、その後の経営に関した話は一切なし。
中小企業のお助けマンである税理士が、マネジメントに関して自分だけで考えていく理不尽さ。
これはどう考えたらいいのだろうか。
もちろん、なかには少人数で勉強会を開いているところはあるが、主流は税法の研修。
今後少子高齢化がますます進む中で、税理士事務所も法人化が急速に進むはず。
そうなると、やはり自己流の経営から、法人経営のノウハウを”学習する機会”が増える。
そこで初めて税理士法人の経営者として、アンテナを大きく広げることになるのではないだろうか。
たった一人の経営者から集団を管理できる経営者になることが、事業承継できる要素にもなる。
人の話を聞ける税理士法人の経営者でなければ、これからの主流にはなれないのかもしれない。
やはり、個人事務所の経営者が、事業承継できる事務所は限られてくるのは今も同じ。
税理士法人には様々な選択があるので、競争になるとどうしても、個人事務所は勝てなくなる。
事業承継支援室長
大滝二三男