税理士事務所の命令系統は、ほとんどが文鎮型。
つまり、所長が職員個々に、指導及び顧客情報などの交換をする形。
通常の個人事務所の多くが職員5名程度までなので、所長も目が届く。
ところが職員が10人を超えると、所長独りで見ていくのは限界に近づくことになる。
そこで、昔から”番頭さん”と言われるような年長者が、職員の声を代弁するようになる。
そうは言っても、職員の処遇改善などを所長に進言するといったことは、ほぼない。
職員が抱えている業務の進捗具合を掴み、所長に報告するといったもの。
”番頭さん”も担当を抱え、他の職員の業務にはそれほど首を突っ込んではいられない。
こうなるとやはり所長自らが、職員全員を見守れなくなると、問題が起きてくる。
たとえば、業務が遅れがちな職員に、同僚が面倒を見るかと言えば、そこは疑問。
「任された仕事は自分でこなせよ」と面と向かって言うか、それはできない相談。
他人の仕事まで手が回らない現実に、他人のことまで世話はできないというのが実情。
そんな職員が独り孤立した場合、だれが面倒を見るのだろうか?
このような状態で事業承継の話が進むと、その職員は非常につらい立場になる。
引き受ける事務所が許容できる余裕の陣容を整えていれば、心配なしだが。
通常、引き受ける側も、それほど人的な余裕はない。
目いっぱいの陣容で業務を行っているのが、税理士事務所の常識だから、そこは大変。
引き渡す側はその段階で、事務所の改善などができない状態が普通。
それだけに、引き受ける側は、孤立した職員も受け入れられる余裕がほしいところ。
事業承継支援室長
大滝二三男