「従業員のために事業承継を決意しました。良い相手を探してください」
と言っていたのは、傘寿を迎えた大ベテランの税理士。
ご本人は健康そのもので、会計事務所以外の会社も経営。
むしろ、会計事務所が副業とも思える活躍ぶり。
そんな事務所も職員の移動が激しく、顧客もここ数年は減少傾向に。
なかには、辞めていた職員が”持ち逃げ”した例もあるようだ。
自らも、会計業務より他業種が気に入り、会計業務は職員任せ。
それだけに職員への目が届きにくく、残った職員からも承継話が出ていた。
同じシステムを使っている事務所を希望されたので、最適と思われる事務所を紹介。
数回面談が行われたのだが、引き渡すという話がいつの間にか共同代表という話に。
というのも、代表者になっていなければ、顧客はついてこないと主張。
引き受ける側としては、承継するのに二人代表ではおかしいと反論。
実際には、これまでの事例から承継する先生の肩書はほとんど問題なし。
つまり、お客さんは担当の職員が残っていれば、ほとんどが離れないのが実態。
それでも自分が代表でなければならないと主張。
こうなるとまとまる話もまとまらない。
結果、数か月の交渉がここでストップ。
果たして、本当に事業承継して職員を安心させたかったのか?
本音はどこにあったのだろうか?税理士として同じ支部で数十年、そこから去りがたかったのか。
疑問は残されたままです。
事業承継支援室長
大滝二三男