少子高齢化とともに進む都市の一極集中化。
30年前であったら、どこの事務所も必ず製造業の中小零細企業をお客さんにしていた。
しかし、大企業ばかりか、元気のいい中小企業も、安い人件費を求めて海外に工場移転。
いまや、顧問先に製造業はないという、税理士事務所無少なくない。
東京でも、町工場の”メッカ”と言われていた大田区や品川区でも、製造業は激減。
後継者もいないところでは、廃業後は工場をつぶして、マンション経営をするといったことも。
このケースでは、不動産賃貸業として税務申告の手伝いもあるが、顧問料は取れない。
実際は確定申告のみの、年一のお客さんになってしまい、税理士事務所にとっては付加価値なし。
工場労働者がいなくなれば、食堂や居酒屋、生活用品を扱う商店も廃業せざるを得ない。
これに追い打ちをかけるように、スーパーとコンビニの出店で、商店街もシャッター商店街に。
今から20年以上前から、地方都市の商店街の明かりが、夜8時過ぎには、すでに消えていた。
当時はまだ商店自体は店を開いていたのだが、シャッターを降ろす時間は7時台。
明かりが点いて、商売繁盛のはずの一杯飲み屋もチェーン店に押されて、開店休業。
どこの都市に行っても、同じ店構えのチェーン店が幅を利かすありさま。
この1年でブラック企業などと噂された飲食チェーン店は、当時の開店ラッシュも今は昔。
アルバイト店員なども若者に敬遠され、店を開けることができないチェーン店も出てきている。
こんな状況の中で、地方都市の税理士事務所は、一部を除き、年々顧問先を減らしている。
そう、新規開業や新会社の設立などが極めて少ないのだから、顧客を増やすのは無理。
それでも、安売りをすればお客さんは来るだろうと思いきや、手のかかる厄介な客しか来ない。
さらに資格ビジネス故に、後継者対策もなかなかうまくいかない。
若者たちは首都圏や近畿・名古屋、そして福岡などの主要都市に出たら、帰ってこない。
自分で客を探すより、勤務税理士で上司から言われたことをやっているのが、暢気でいい。
税理士試験に受かったら、数年後には故郷に帰り、独立して、一国一城の主になる。
そんな夢は今の若者と見ない。都会の事務所の方が難しい税務問題や刺激が多く、帰りたくない。
これに輪をかけて、勤務税理士の時にその地の女性と結婚しようものなら、正月だけ帰郷。
息子さんや娘さんが学校卒業後、資格をとっても、もう帰らないと覚悟を決めた方がいい。
こうなると、勤務税理士を探そうとしても、個人事務所に来る若者は皆無。
さらに資格がなくても、転職を希望する会計事務所職員も、個人から法人に矛先を転換。
中規模以上の個人の会計事務所のオーナーも、とにかく優秀な人材は法人に行ってしまうと話す。
個人事務所のままにしていたいのだが、人材確保のために法人にせざるを得ないともいう。
これは地方都市の話ではなく、大都会での話。
特化型の会計事務所では、まだまだ顧問先は確保できるのだが、その担当者が確保できない。
個人事務所ゆえの悩みだが、これを解決するためのフランチャイジーはどうかと、そのオーナー。
自分の事務所も法人の一員となるが、これまで同様にオーナーが経営する。
対外的には法人の支店だが、実態は個人経営のまま。
ただし、顧客サービスの強化・向上ができなければ、顧問先はついてこない可能性もある。
名前だけ変わって、これまで通りのことしかできないというのであれば、本末転倒。
法人組織となったことで、昇任や昇格がある普通のサラリーマンとなるのであれば、職員の士気も上がる。
近い将来にフランチャイズ税理士法人ができてきても不思議ではない。
将来的には、事業承継もスムーズに行われるような気もするが、いかに?
事業承継支援室長
大滝二三男