そんな声が聞こえてくるのが、高齢の先生の事務所。
事務所創設時は、税理士として稼がなければならないと、所長が孤軍奮闘。
顧問先の営業は、ほとんど所長の仕事で、職員は一件も新規顧客を獲得せず。
そんな状況でも税理士事務所の運営はできてきたのが、この50数年の歴史。
その間に、所得倍増や飛躍的な経済成長、さらにバブル経済などで、事務所は安泰。
70年代に独立した税理士で、仕事がなくて困ったという話は聞いたことがない。
税理士であれば、仕事をすればお金がついてきた時代でもある。
それから40年、バブルがはじけたのち、デフレ経済の中でも税理士事務所は生き残ってきた。
しかし、経済状況が厳しくなるにつけ、高齢の先生の売り上げは、目に見えて減少してきた。
多くの顧問先がいっぺんに廃業などにより減少したわけではない。
徐々に顧客が減るとともに、顧問先の顧問料値引き要求に持ちこたえられなくなってきたのだ。
その結果、職員のベースアップは停止、ボーナスも大幅カットとなってきた。
とはいうものの、高齢の先生の場合、職員もそれなりの年齢になり、給与は生活の糧。
事務所の顧客が減っても、月額給与を下げることには、抵抗がある。
そんな事務所で強弁をいう職員は、「俺たちがいるから、先生の収入も確保できてるんだ」という。
これまでにはあまりなかった言葉。
たしかに、職員が顧問先の面倒を見ているわけだから、その一言にも説得力がある。
そう、所長だからと言って、左団扇でいる状況にないのも確かなこと。
これからは、「俺たちの稼ぎ」と大声を叫ぶ職員は少ないにしても、そう思っている職員はいる。
難しい事務所経営の時代になってきたのは、確かなことでしょうね。
事業承継支援室長
大滝二三男