これは、税理士事務所の事業承継を引き受けた経験を持つ先生からの一言でした。
普通は何とか評価を下げて、コストカットをし、営業利益を確保しようとするものです。
特に西日本の先生にはこの傾向が強く、立場が変わると、高く高くと主張します。
そんな中での発言でしたので、「本当にいいのですか?」と思わず訊いてしまいました。
「営業努力すればいいこと。自分でお客を増やせないから、事業承継するんでしょ」
さらに、「一件一件こまめにお客を増やす時間を買うと考えればいいんでしょ」
なるほど、時間を買うわけですね。特に所長しか営業をしないこの業界でのこと、納得です。
だからといって、誰でも事業承継できるかといえば、そうはいきません。
昨年のこと。小さな事務所を若手税理士に紹介しました。
「まずはお手伝いをして、先生のやり方を学び、それから徐々に引き継がせてください」
殊勝にも、こんな言葉を吐いたのですが、すぐに正体が現れました。
「先生と一緒に行った際の交通費はいただけるんでしょうか?」
通常は事業承継の契約を結び、それなりの対価一部を支払い、引き継ぎ業務に入ります。
ところが、まず顧問先から引継ぎことを了解してもらい、初めて契約するというのです。
引き渡す側の先生もそれには一理あると納得し、顧問先回りを始めました。
というのも、経理業務を一部助けてもらったことがあったという。
しかし、そこで出たのが”交通費”問題。さらに、日当まで請求する始末。
これには仲介役としてもあんぐり。お金を払って引き継ぐのが、引継ぎの経費を払えという。
最終的にすべての顧問先からノーを突きつけられ、退散したのは言うまでもない。
こんな税理士には引き継ぐ資格はなし。有望な若手と見ていたのだが、見る目がなかった。
しかし、評価は高くても良いという税理士は、確かに業界でも高く評価されている。
そんな税理士が多くなれば、業界もまだまだ捨てたものではないのだが、いかに?
事業承継支援室長
大滝二三男