自分のクライアントだけを承継してもらう場合は、考えないでしょう。
というのも、顧客を紹介するのと同じですから、その紹介料をもらうと考えられます。
その際は、顧客が辞めてしまうだろうということで、顧問料収入から少ない金額を考えます。
その割合については、それぞれの先生によって異なります。
ある人は顧問料の一年分を要求しますし、また50%でいいという人もいます。
交渉事ですから、一律のパーセンテージで決まることはほとんどありません。
また、自分は身を引くが、職員は引き継いでもらいたいという考える方もいます。
弊社が仲介しているケースでは、これが普通です。
この場合には、職員に給与が一番問題になります。
これまでのブログで何度も書いてきたように、先生の報酬が一番安い事務所もままあります。
つまり、労働分配率が高すぎて、事務所の経営が成り立たない状態にまでなっている事務所です。
こういった事務所では、どうしても査定金額も下がりますし、先生が手にする金額も当然少なくなります。
さらに、事務所をそのままの形で運営するのが難しいと、手を引く承継希望者も出ます。
実はこのようなケースはほとんどありませんが、引き継いで事務所が赤字になっては元も子もありません。
こうなると、事務所を承継して、収支を良くすることができる新しい承継者を探すことになります。
場合によっては、職員との話し合いで給与を下げることも考えなければならなくなります。
先生が辞めて事務所を閉鎖してしまえば、職員は職を失い、路頭に迷います。
会計事務所の業務に精通しているからと言って、すぐに同じ給与で雇ってくれるところはありません。
長年勤めた結果が、このような状況になるのは、もちろん我慢ができないことでしょう。
しかし、先生が決心した以上、いつまでも放っておくわけにもいきません。
悩ましい限りですが、承継者の事業が成り立たないような事業承継は、もちろん不可能です。
従って、先生は極端な話、死ぬまで事業を辞めることができない、といったことにもなりかねません。
人の良い先生は、そんな状況にも落ち込むことにもなります。
本当に悩ましいですね。
事業承継する前に、相手の収支を考えなくてもいい状況を、作っておくべきでもありますね。
事業承継支援室長
大滝二三男