会計事務所が顧問先企業の決算対策で生命保険の利用を指導するのは”常識”。生命保険会社の代理店として登録し、保険契約を獲得したときに手数料を手にするのは当然の報酬。会計事務所の収益の大事な柱として、別会社で営業しているところも少なくない。
長年交流している米国の会計事務所(EA,CPA)に聞くと、これは御法度。生命保険ビジネスを直接行うことも、FPなどに紹介して紹介手数料を手にすることもできないようになっている。これは顧客の弱みにつけもむビジネスという認識があるため。
しかし、会計事務所と関係の深いFPおよびFP会社が会計事務所の情報を元に営業活動を行っていることも事実で、中には会計事務所の中の一室にFPが常駐し、会計事務所のお客を紹介しているケースもある。この場合、紹介手数料は部屋代に化けている事例もある。
米国発の大恐慌はサブプライムローンに始まるが、このローン、返済が不可能になった時点でローンで購入した住宅を売却するばその後の返済は一切する必要がないという、すばらしいローン。銀行もこのローンを証券化して売却したから損はなし。
損したのはこの証券を買った人たちで、これが全世界の金融機関、ファンドとその顧客。リーマンはレーティング会社と手を組み、証券の評価をAAAとして販売。レーティング機能を持たない日本の金融機関はそのレーティングを信じて買い込んだという。
話は、米国に戻るが、今回のサブプライムローンは資金的に余裕のない一般庶民(民俗学の大家・柳田国男は庶民が庶子につながるとして使用しなかったが)は喜んでこのローンで住宅を購入。教会のの牧師までが休日の礼拝後このローンを紹介し、手数料を手にしたとも。
会計事務所がこのローンを紹介したかどうかは定かではないが、倫理規定に違反することから、紹介手数料をもらうビジネスに首を突っ込むことはない。これも、数年前のエンロン事件などをを契機にしたコンサル会社とCPA事務所の分離でも明らかだ。
そんな資格者に厳しい倫理規定を採用している米国で起こった詐欺紛いの金融大恐慌の余波は全治3年ですむものではないだろう。会計事務所がどんなにがんばっても中小企業を再生できる手立てはなく、結局お上がどこまで有効な手立てを実行できるかにかかっているわけだ。
再度、日本の中小企業が元気になったとき、会計事務所の仕事が税金の申告だけが重要な仕事ではなく、保険の手数料収入に期待するのではなく、中小企業を元気にできる手立てを考え、経営者とともにその成果からの報酬を手にできるような姿に変貌していること期待したい。
事業承継支援室長
大滝ふみお
でした。