前回は移籍する職員の給与問題について触れました。
高齢(おおむね70歳以上)の先生の事務所では、所長より、高い報酬を毎月手にしていることがあります。
先生とともに実務を担当して、30年。毎年ベースアップがあり、若者が一生手にできない月給をもらっている人もいます。
それらの人は、所長や顧問先からも「先生」と呼ばれるほどの絶大な信頼を得ている人たちでしょう。
さらに事務所も所長の年齢とともに、売り上げが減少。それとともに、所長が手にする収入は毎年減少。
所長は自らも年金を手に、事務所の”あがり”を頼る必要もなくなり、結果、職員給与の割合が高くなる。
「もうお金を使うことも少なくなったんで、職員の給与の方が高いんです」と吐露する所長も少なくない。
職員の方は、「自分も必要ないから、給与を下げてください」と言うことはないから、逆転現象が起こる。
そんな状態で、事務所を譲ろうという先生も実は少なくない。
自ら、職員に給与を支払うことができないから、「事務所を閉めます」という所長の方が多いかもしれない。
それでも、事務所を承継してもらい、職員の生活を見てもらおうとするのは、引退する先生の大いなる希望。
単純に「もう歳だから、事務所は閉鎖するので、勤務先を探してください」とははっきり言い出せない人も。
それをきらい、職員の面倒を最後まで見るために、事務所を譲渡す税理士さんもいる。
そのような事務所を承継する税理士としては、コスト計算がちらつくものの、「ますは、譲り受けることが先決」
承継した後に、職員の給与も考えようというわけだが、後先を間違うととんでもないことに。
つまり、長年担当してきた顧問先とは、いわばツーカーの中になっている職員にしてみれば言い分もある。
「ここまで長く付き合えたのは、自分が誠心誠意、お客さんのために頑張ったからだ」と言う。
だから、新しい先生は自分の言い分をしっかり聞いてもらいたい、評価してもらいたいと主張する。
しかし、承継者にとって、この手の職員は”使いにくい”存在。年齢もネックになる。
譲り渡す側では、ほとんどの定年制はない。「歳ですから、辞めてください」とは、はっきりと口には出せない。
この点は承継側で、就業規則を策定し、対象の職員に提示できるように、準備しておく必要がある。
「60歳定年制だが、今回は特別に65歳まで頑張ってください」と言われれば、悪い気はしない。
「自分も辞めようかと思ったが、お客さんに残ってもらうためにもひとがんばりしよう」という気になることも。
「税理士は人遣いが下手だ!」とハッキリ言うコンサルタントもいるが、誰もがその指導を受けるわけではない。
どうか、承継希望の税理士さん、自分が雇ったわけではない、古手の職員の承継にも力を入れてください。
事業承継支援室長
大滝二三男
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