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税理士事務所を事業承継すると退職金まで負担?

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昨年発行された税理士事務所の事業承継本に、退職金までも引き受け手が払うといった記述。

現役の税理士さんが、事業承継を薦める内容を書いたものでした。

この中で、従業員の退職金も引き受けてくれるから、譲り手の負担は軽くなる。

さらに、従業員の勤務年数も継続して計算されるので、退職金も増加する。

こんな内容のことが書かれていましたが、現実にはいかがなものでしょう。

筆者自身もお子さんに事業を譲り、事業承継の対価をもらうと書いていますが、こちらも??

では、退職金の問題ですが、事務所に勤めた経験のない人の退職金を肩代わりしますか?

これまでの数多くの案件を仲介してきましたが、退職金を引き継いだ例は一件もありません。

同時に、雇用は守るにしても、事業承継をした時点から新たな勤務年数はゼロからのスタート。

それ以前の勤務年数は前の事務所で清算。つまり、退職金もその時点で清算します。

ですから、譲り渡す先生の退職金債務は、引き受け手は継承しません。

通常は、承継が決まった時に、一時金などを受け取り、それを従業員の退職金に充当します。

最近は、退職金規定がない引き受け側の事務所も多く、この清算は譲り渡す側にとって重要です。

譲り渡す側の職員が退職金を受け取り、新たな事務所に勤務しないというケースも出ています。

これはどんな業種でも同じで、税理士事務所に限った話ではありません。

なかには新しい事務所に定着させる目的で、退職金を事業承継の半年後に払うといった例も。

これは、職員の退職とともに顧客が減少し、事務所の評価が低下するのも防ぐ意図もあります。

しかし、これは労働基準法に違反しますので、やってはいけないでしょう。

先般もこの本を読んだという方から、退職金債務も肩代わりされますか、といった質問がありました。

答えは、もちろんノーです。退職金を肩代わりする場合には、当然承継の対価と相殺されます。

退職金規定はあるが、その資金を蓄えていなかったという先生には、きついかもしれません。

中退金などの制度もありますので、雇用主の負担はそれほど高くありません。

同時に、自分で留保する必要もありませんので、これらの制度を利用するべきでしょう。

現実に沿った解説をお願いしたいというのが、この本を読んだ実務者の感想でした。

事業承継支援室長
大滝二三男

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大滝二三男

事業承継・M&A支援室長

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