税理士事務所の事業承継の場合、譲り渡すのはほとんどが個人事務所経営者。
一生涯で一度のことですから、所長・税理士は腹が据わっています。
引き受け手の税理士も自分の考える方向で、これまた腹は決まっています。
大きな組織の場合、経営者から管理部門に交渉の相手が変わることがあります。
同時に、引継ぎ段階でも、引き受け手の管理部門の責任者が交渉に出てきます。
管理部門の責任者が出てきた場合は、ほとんどがリスク回避のための細かな話し合い。
現場から一切ノーのサインが出ないように。
また出てきたときには、適切な回答できるように、リスクを徹底的に排除します。
譲り渡す側の先生にしてみると、細かいことより、大筋で了承すればいいと考えています。
お金の問題ではなく、将来的に自分の事務所経営が否定されなければいい。
40年以上のキャリアを持つ所長には、自分を信用するお客さんだけが残っているとの自負があります。
引き受け手の管理担当者には、そのようなキャリアを持つ先生の心のうちはあまり関心がありません。
単純に、事務所を譲り受けて支払う対価考慮しても、経営上の収益が上がれば問題なし。
譲り渡す先生の思いなどは、数字(収益)以外には、あまりウエートを置いていません。
譲り受ける側の税理士にとっては、時間をあまりかけない営業としか考えていないかもしれません。
こうなると、当然事務方も”数字”でしか、相手のことは理解しようとは考えません。
同時に、支払う代金が経営を圧迫しないよう、交渉にも力が入ります。
交渉経過についても、経営者の耳触りのいい話しができるようにしか、交渉のベクトルを向けません。
仲介者にとっては、厄介な”壁”が建ち、時間だけが過ぎることになります。
それというのも、向暑の際に最終決定権を持っていないので、交渉は短時間まとまりません。
ワンマン的な経営者の場合には、所長の一言がすべてですから、話は簡単に済みます。
しかし、現場サイドでは、契約成立後も詳細な取り決めについても、具体的な交渉となります。
そうなると時間がかかりますので、時には”破談”となるケースも出てきます。
交渉は短く、引継ぎは念を入れて!
これが事業承継の一つのポイントかもしれません。
事業承継支援室長
大滝二三男