人の口に扉は付けられないといいますが、今回の話はいい例です。
事業承継した事務所の顧客に挨拶に伺った時の話です。
かなりの規模でチェーン店を経営する社長の口から出たその言葉、”乗っ取り”。
彼が主宰する企業は、M&Aが盛んにに行われている業種だけに、そんな言葉もあり。
しかし、やむを得ず事業承継をさせられた税理士法人にとっては、??マーク。
なぜにそんな言葉を浴びせられなければならないのか、法人の代表者も唖然。
自らの税理士法人の経営に全力集中なのに、突如として事業承継の依頼が飛び込んだ。
依頼というより、言葉は悪いが”押し売り”。
それも、昔から同業者として切磋琢磨していた税理士の家族からの依頼。
事務所の職員のことも考えると、断ることもできず、職員をやりくりして体制を整えた。
そのうえで、重要な顧問先には、一番に挨拶に赴いたわけだ。
事業承継をするにはそれなりの理由があるが、今回は先生の病気。
所長の長い不在に顧問先も気が気でない。
「先生にはいつ会えるんだ」と再三再四の電話が事務所にかかってきた。
この間に所長のご家族が走り回った結果、今回の税理士法人に行きついた。
実は病気入院中の所長は、早くから税理士法人の代表にお願いしろと言っていたという。
しかし、相手を知らない家族は、支部に相談したり、同じシステムを使っている人に相談。
結果はすべてアウトだったことで、税理士法人に行きついた。
非常に短い時間で事業承継契約が締結されたが、これも数十年の交友関係があったから。
契約締結後、「早く、お願いに来ればよかったんですが……」
それにしても、契約成立の数日後に挨拶に行った際の”乗っ取り”の声には、空いた口が……
これが税理士法人の代表者の感想、「うちが欲しいといったわけではないが、助けないとね」
事業承継支援室長
大滝二三男