この桜のシーズンは卒業そして進学・入学の一大イベントが繰り広げられます。もちろん、高校や大学を卒業した若者たちが社会に飛び出すシーズンでもあります。その一方で、まるで失われた10年を思い起こされるような大不況の中で彷徨わなければならない若者たちも少なくありません。
そして、それらの若者たちの親たちにとっても心休まらない時期が続くのです。大企業を中心とする派遣に打ち切りで多くの非正規労働者が失業したばかりでなく、住む家も失ったことは誰もが知っていること。中には20代の若者たちも住所を持たない流浪の民となっています。
団塊の世代として、若いときに転職することに働く場所がないなんて考えられなかったこと。自分の子供たちがまさか”失われた10年”を迎えようとは思いもしなかったし、まじめにやっていれば就職なんていつでもできるよと面接で落とされても慰めもしたが、それが今の時代はそんな慰めは何の足しにもなりません。
仕事をやめたら次の仕事を見つけることは至難の業。よほど優秀な人材で、周囲の評価もさることながら自己主張もしっかりできて、仕事力が十分評価される人材でなければ、”次の仕事”はまったくない状況。同じ業界の中でその仕事力が人の数倍なければ、転職もままならないというひどい経済環境です。
会計事務所の業界でも、資格を持っていてもその人格およびコミュニケーション能力が優れていなければ、成長型の事務所には入ることはほとんどできない状況になっています。そのおかげで人材紹介業がつい2,3年前に比較すると天国と地獄。資格を持っている人が多く登録されていればよかった時代は終わったようです。
そんな中で、当事業承継支援室にも優秀な人材を確保したいという事務所からの依頼が寄せられますが、それも自分の後継者となる人材を要求されことがあります。ここで当支援室ははたと悩みます。自分の後継者となる人材を育てることができなかった先生が果たしてそのような人材とうまく事務所を引き継ぐことができるのだろうかと。
当然、赤の他人に事務所を引き継がせるわけですから、経営者である所長が広く、大きな心がなければ、”自分の財産”を引き渡すことはできません。2,3年の短期間で承継をすることももちろんできないでしょう。所長の家族も後継者候補の人となりはしっかり見ようとするでしょうから、まさに10年、20年計画が必要でしょう。
とは言うものの、税理士事務所のサイクルで言いますと、およそ企業の寿命といわれる30年が十分お客様の要求に応えられる期間。そうなると、開業10年にして、後継者対策をスタートしなければ間に合いません。いまや、税理士試験は昔の公認会計士試験と同等、いやそれ以上に難しいものとなり、家業を継ぐことも至難の業。
なかには、資格を持った嫁を紹介してほしいなんて都合のいい要求をされる先生も出てくる始末。さすがにその要望に応えることはできませんが、それ以上に多いのが婿さん候補を紹介してほしいというのは本当に多い。これも今の若者たちのはノーサンキュウ。義父さんが所長で、家でも職場でも頭があがらないなんて想像もつきません。
というわけで、当事業承継支援室は人材紹介では一歩も二歩も専門の業者さんに譲りますが、税理士先生の事務所の承継問題では他の追随を許しません。先生のご事情にあった承継策を一緒に考えていきます。どうか、先生方と同様に守秘義務の中で仕事をしますので、どうか何なりとご相談ください。
事業承継支援室長
大滝ふみお
でした。