「もう限界です。承継相手を探してください」と依頼されるケースの理由はほとんどが年齢。その年齢には個人差があります。決して、満いくつといった年齢ではありません。
事務所経営に熱意があるうちはいくつになっても経営はできます。しかし、経営そのものに飽きてきたらもう引退の年齢ではないでしょうか。
税理士事務所の場合、きれいごとを行っても、職員にすべてを任せ、決算の説明にも行かなくなるときにはプレーヤーとしての税理士事務所長は退任の時期に来ているでしょう。
ただし、最近の税理士法人の経営は中小企業と同じように社長”が営業しませんと成長が止まりますから、プレーヤーとしての税理士業務はそこそこにしてマネジャとし手の業務に精を出さなければいけなくなります。
その意味では、現在の事務所経営は実務を職員任せにしないで、自分でやるという税理士さんには事務所として大きく成長する余地はないのかもしれません。
よく企業の売りは何ですかと、銀行に聞かれた中小企業の社長さんが誇らしげに「私がいなければこの会社は成り立ってませんから」の一言で、融資話をストップしてしまうといいますから、これは税理士事務所にも共通します。
つまり、税理士事務所の”売り”は所長である税理士さんしかいないのです。もちろん、税理士事務所が借金をして業務を拡大するために金融機関に自分の存在をアッピールするといったこともあまり聞いたことがありません。
これからの税理士事務所が大規模法人に収斂されるとは思いませんが、企業として税理士事務所を経営するためには、所長以外の”商品”を売りにしないと、成長は見込めないのではないでしょうか。そこには人材への投資が不可決です。
大規模税理士法人以外でも、経営に関する数字を職員に公開し、年初に策定した経営計画を毎月の経営実績との乖離等をを精査し、目標達せするために部門ごと、各職員別に必要な業務展開を行っている事務所もあります。
このような事務所では「もう限界、云々」といった話はもちろんありません。承継をする側にいる事務所には限界はありません。日々、成長のための訓練が事あるごとに行われています。まさに信賞必罰ではないでしょうか。
成長している税理士事務所は”戦場”です。右肩上がりの成長経済の中での”戦場”とは比較にならないくらい個人の責任と権限をはっきりさせたうえの行動が
展開されています。実績を出したものには高給が支払われています。
そんな税理士法人が事業承継をするとなると、やはり承継先の収益性が問題になりますが、そう簡単に企業風土が変わるわけではありませんから、承継が落ち着くまでにはそれなりの時間が必要です。
でも、承継される事務所の時間の流れと承継する側のそれとは明らかに違います。風土を大事にしていたら、やはりコストを取り返すには相当の時間がかかってしまいます。経営上はそんなに時間をロスするわけには行きません。
やはり、スピードが大事なります。われわれがお手伝いしている事業承継でもノロノロした案件はまとまらないケースも多くなります。事務所の承継ですから正確を大事にすることも必要ですが、うまく行くものは早く結論が出ます。
これも譲り渡す側と受ける側との相性もありますが、一番は譲り渡す側の先生の腹が決まっているかどうかです。中途半端に承継を考えても、未練が残ったりしますので、いけません。「もう限界は」はっきり限界ではないでしょうか。
事業承継支援室長
大滝ふみお
でした。