税理士事務所の事業承継を見てみると、個人事務所でもかなりの多くの先生方の登録がある。
親子2代で事務所を経営していうという先生は、息子のために事務所を拡大したいという。
自分と同じ年代の経営者のことを考えると、顧問先は増える見込みは少ないのと判断。
そこで弊社の支援室への登録となるわけだ。当支援室は登録料などは取らないから安心とばかりに。
このような年代の先生は50代後半から60代中盤までだが、なかには70代前半の先生もいる。
税理士歴30年を超えるような先生は、その段階で自ら営業をしてお客を増やそうという気はない。
老顔の資産も蓄えて、子供へのバトンタッチを考えるわけだが、これまた法則はない。
事務所を継続する気力はなくなり、お客さんとの接触も避ける傾向にある時は、そろそろ継承時期。
80代後半の創業税理士が、60代の息子さんに、「今日からお前がやれ!」と職員の前で宣言。
大先生の”引退式”も行って、「息子をよろしく頼む」とお客さんにも話はしていたのだが。
この先生、いざとなると、印鑑と金庫のカギは一切息子に渡さず、「俺が持っているからな」の一言。
何のことはない、格好だけはつけたのだが、数年経った今も、しっかり鍵は握っているという。
詰まる所、いくつになっても実験は渡さない。新しい税法が頭に入らなくても、実務とは無関係。
それだけに承継すると言っても、自分が動ける間は渡したくない、人間の業というもの。
実権を渡されない中高年の先生からも、そんな事実を語ることは自分の恥をさらすことゆえ、無言を通す。
親父さんを見返すためには事業を拡大するのが一番と考えるのも、実はこの年代から50代前半まで。
もっとも、単純に事業を拡大したいと考えるのは、60代に届くか届かない年齢で、精いっぱい。
60歳の声を聴くと、いままで以上に七位も苦労することはないと、営業にも力が出ない。
やはり40代から50代が、働き盛りであるのはいつの時代でも変わりがないし、税理士も同じ。
なかには60代前半で、税理士業務とはお別れするという人も、ここ数年増えてきているのも事実。
でも、なかなか辞められないのも、個人事務所の宿命でしょう。
事業承継支援室長
大滝二三男