税理士事務所の顧問料の集金は、担当者が顧問先に伺った折に行うのが通例。
都市部においては、自動引き落としなどにより、担当者がお金に触らないようにする傾向が強い。
人間誰しも弱いもの。つい間がさして、集金した顧問料に手を付けてしまう。
未収金が貯まってくると、所長から事情を聞かれた際に「お金が回ってこないそうです」と嘘をつく。
一度これでお茶を濁すことに成功すると、ついつい嘘を言い続けるkととなる。
その理由は、ほとんどが遊びのお金のため。
ある50代後半のの職員は、”彼女”ができてしまい、2年間で400万円を着服。
あまりに未収金の多さに、顧問先に事情を聴くと、すでに集金済みであることが判明。
早速その職員を問い詰めると、家庭と彼女のために二つの財布が必要だったという。
当然首になると同時に、警察に突き出さないということで直ちに200万円を返済。
残りの200万円は、退職金を共済に積み立てていた退職金をすべて没収。
事務所には実質的な損害はなかったが、顧問先への信用度は大幅に低下する結果に。
実のところこの事務所も高齢な税理士さんが経営していたが、昨年についにはつぶれてしまった。
というのも、税理士である所長が顧客の税務申告書などをチェックすることなく、職員任せ。
顧問先に対する税務調査なども頻繁に行われ、税理士の指導が行き届いて理な事実が判明。
たびたび税務署からの指導が行われ、最終的に事務所を閉鎖するしかないことになってしまった。
実際の話、この事務所の所長は、担当者が掌握している顧問先の全貌をほとんど知らなったという。
言ってみれば、所長自らが名義貸しを行っているような状況が、常態化していたもの。
これでは、職員がネコババしてもそう簡単に見破られないというもの。
こんなひどい例はほとんど耳にしないが、こんな事務所を承継する人はもちろんいるはずもない。
承継先の事務所の実態を的確につかまなければ、事業承継で大損することにもなりかねない。
それにしても、顧問料のつまみ食いがもとで、事務所が閉鎖されるようなことはないだろうが、
職員の非行をを防ぐには、やはり自動引き落としなどの手法を採用するしかないのも事実だ。
事業承継支援室長
大滝二三男