先日、独立後一年半を過ぎた税理士さんが、事務所を訪れました。
独立して一年半、大変悩んだ末のご相談とのことでした。
勤務していた事務所の所長は、独立する5年に以上前から実務を相談者に任せ切り。
税務調査に際しても、調査当日も一切現れず、相談者がすべて対応。
申告書の作成は当然職員が行うものの、そのチェックも形ばかり。
その間、所長の家族も事務所にいることもあり、様々なトラブルに遭遇。
所長一族との摩擦を解消することができずに、やむを得ずに退職、そして独立。
勤務税理士として、顧問先とは10数年を超える付き合い。
所長は顧問先に顔を出すこともなく、当然のように勤務税理士がわが社の”先生”。
その先生が独立するということで、勤務先の事務所との契約を破棄する顧問先も出てきた。
自分としては、お客さんは勤務先の事務所のものであるので、営業は一切していない。
それでも、お客さんはついてきてしまったという。
そこで、所長さんと交渉し、ついてきた顧問先の顧問料を何らかの形で支払うことを約束。
法律家である税理士さんであるにも拘わらず、契約書は一切なし。
これが問題の根本。
つまり、何時まで、いくら払ったらいいのか、口約束もはっきりしないまま。
実はこの1年半に、移ってきた顧問先からの報酬額の一年分は支払い済み。
相談者は、今後も同じ金額を支払わなければならないのかと、必死な思い。
弊社の答えは、支払う必要はまったくなし。十分支払うべきものは支払っています。
というのも、相談者が独立した際に、顧問先は勤務先の所長を見限っていた。
つまり、決算ばかりか税務調査にも出て来ず、職員任せの税理士に、顧客はレッドマーク。
日頃から面倒見てくれる勤務税理士に仕事を任せた方が、得策と考えるのは当然のこと。
この結果、顧客の25%が独立した税理士の下に駆け付けた。
しかも、独立に際しては事務所で積み立てていた退職金も、勤務税理士は放棄。
それでも、勤務先であった税理士事務所からは、請求書が届く。
これまでに支払った金額を確認すると、ついてきた顧問先の年間報酬に対応するもの。
所長さん側からは、「これからずっと支払え!」といった文書が届いている。
何とも業突く張りな経営者ではありませんか。
勤務税理士のすべてを任せて10年近く。その税理士が辞める時に退職金も支払わず。
併せて、「”移った顧問先”の報酬額をすべて支払え」!という。しかも、年限は一切言わず。
とんでもない横暴さ。
とにもかくにも、税理士事務所の事業承継、そして独立時のごたごたは実に難しい問題ですね。
事業承継支援室長
大滝二三男