自らの人生に終止符を討つことになるかもしれない、事業承継の話。
顧問先との信頼関係があってこそ、経営の数字を隠すことなく知らされた税理士生活数十年。
資産内容もすべて把握している顧問先を、他の税理士に任せなければならない、その心情は?
顧問先の苦労を知り尽くした税理士として、はたして次の税理士にすべてを託せるのだろうか?
後継者を育てることができなかった、いや育てなかった税理士はどんな思いなのだろう。
自らの経営、収支だけにとらわれた税理士に、後継者を求めるのは無理がある。
息子や娘が税理士資格を取れれば、それで安泰。自らは引退することもなく、”家業”を継続する。
それで顧問先が良いと言うのか、それ以上に「先生が何時までも見てくれるので安心」。これが何より。
しかも、自分が辞めても、家族が引き継いでくれるので、顧問先にも心配は掛けません、となる。
そんな先生と話をする時、先生のこれまでのご苦労を聞く(聴く)ことになる。
そう、物理的に聞こえて来る先生の話を”聞く”のではなく、神経を集中した”聴か”なければならない。
ついつい、話の途中で口を挟みたくなるのを我慢して、先生の成功譚を聴く。
経営者も話がしたくてしょうがないそうだ。それを聞く耳があるではいけません。
とにかく、聴くのだそうです。それにより、話はいい方向に進むこと請け合い。
これが事業承継を担当する事業承継支援室の不文律。
話がしたい時に話をさせる。それを途中で遮るようなことはしてはならない。
話の結末は十分憶測もできれば、推測も間違いなし。それでも、最後まで話を聴く。
話をすべて聴いてくれた人に対しては、一切文句は出ません。むしろ、感謝の気持ちばかりです。
もしも話がこんがらがった時には、初心に戻り、お話を聴くべきでしょう。いかがでしょうかね。
事業承継支援室長
大滝二三男