税理士には、暖簾はありません。一身専属ですから、当然です。
そんな判断が国税庁から示されたのが、昭和47年。広島国税局の質問への国税庁の答え。
当時のことを考えると、税理士が辞める時に、他の税理士から受け取った金員は処理。
その当時は、税理士稼業を辞める時には、事務所の職員も退職させ、顧問先だけを引き継いだ。
こうなると、事業そのものを引き継ぐのではなく、顧問先を紹介するだけ。その謝礼が支払われた。
金額的にも、顧問料収入の一年分などということではなく、謝礼程度の金額が普通。
したがって、顧問先を紹介した手数料をもらい、雑所得として申告してもよかった。
でも、当時から、譲り渡した先生のご家族(遺族)に、かなり長い年月にわたって支払われていた。
そのようなケースでは、亡くなった先生の奥さんに毎月支払われていた謝礼の課税はいかに。
あまり、課税されていたということを聞いたことがない。
しかし、今の税理士事務所の事業承継は、まったく顧問先を紹介するというものではないのが実情。
譲り渡す先生は、承継先の税理士法人の社員税理士となって、数年間は実務も担当する。
ご自身が限界を感じ、社員税理士を辞める時には、個人時代の顧客は、すべて法人に引き継がれている。
そのためにも、事務所の職員も雇用してもらい、事務所の備品もすべて譲渡しているのが普通。
ただし、個人所有の事務所は税理士法人が賃貸する。
職員も、備品等も、そして所長先生も一緒に新しい税理士法人に職員として雇用される。
当然、お客さんは新しい税理士法人の顧客として、契約するよう税理士さんが動くことになる。
でも、これは営業活動の一環であり、単なるお客の紹介ではない。
事業として評価された金額を経営者が手にするものであり、 単純に紹介料とするべきではないだろう。
40年前の判断がいまだに是正されることなく生きていることに、唖然とせざるを得ない。
一昨年、国税不服審判従で判断された事例は、勤務税理士との承継の事例。
これは、紹介料と判断することに異論はあるにしても、認められる要素はある。
しかし、事理士法人に事業を譲渡し、自らも勤務税理士として働くことに対する判断はいかがなものか?
疑問を呈さざるを得ない。前例主義の判断から脱皮することを願う。
そうすることで、これからの十数年、業界は活気づき、社会の評価も高まると考える。
事業承継支援室長
大滝二三男