昨日も書きましたが、職員が移った瞬間にお客さんが契約を解除する例が多くあります。
「持っていかれた!」という表現が使われますが、移った先が分かると、「取った」「盗られた」。
税理士さんが営業をして契約(口約束も)したお客さんでも、日ごろの業務は職員任せ。
職員が営業してお客さんを増やすことは、ほとんどないのが普通。
ですから、苦労して開拓したお客さんを、長年面倒を見てきた職員が浚って行ってしまうわけです。
このようなことが組織的に行われたことがあります。
関東での話ですが、ベテラン職員を含め4人の職員が次々に辞めて行きました。
所長も日頃の業務を十分チェックしていなかったこともあり、辞めて行くのは仕方ないと諦めていました。
ところが、辞めた職員が担当していた顧問先の契約が、次から次へと解約されていきます。
気が付いた時には、報酬額の総計が5千万円を超えるまでになっていました。
実はその4人組、事務所在任中にすでに記帳代行会社を立ち上げ、そちらに業務を移していたのです。
それが分かったのが、なんと、同業者からの連絡。
連絡してきた税理士さんの事務所から独立した税理士が、その記帳代行会社の税務を担当。
しかも、4人組の悪だくみを知った上で行動だけに、元の雇い主は許せないと、告発したもの。
こんなケースは本当にレアケースですが、実際に起きうる事態です。
何がそうさせたかはもちろん定かではありませんが、事業承継の際にこのようなことが起きることも。
事実、当支援室が仲介した案件でも、承継日に番頭さんが辞表を出したケースがあります。
その事務所の先生は、お客さんの所へはほとんど行きません。すべて職員任せ。
とはいうものの、お金には厳しく、未収金の処理などを口うるさく、”指導”。
「お金」「お金」を言うだけで、業務に関してはほとんど口に出さず、指示事項も女性職員に言うだけ。
そのような日常の事柄は、経営者・所長税理士にお聞きする話にはもちろん出てきません。
引継ぎが始まった承継者からの苦労話で、当支援室に伝わってきます。
もちろん、その後の対応に関しては、承継者と相談しながら行います。
このケースでは、辞職理由は承継が始まる前にも、所長さんが「他業界に移る」と聞いていたことだった。
所長さんも慰留に努めたのですが、辞める日がたまたま承継の日となったというのが、所長の認識。
当支援室では、あまりに不自然ということで、次の職場について調査するよう、所長に要請。
しかし、この所長、「彼は嘘が言えるほどの度胸はない」というばかりで、上の空。
その結果、辞職の日から、次から次へと、辞職した職員の担当の顧問先から契約解除の連絡が。
ちなみに、その職員が辞めてから数か月後に、「××さんが営業に来たよ」と顧問先から言われる始末。
「友人の会社の経理をやる」と言っていたことの嘘が明らかになり、所長も観念し、事務所の評価もダウン。
この二つのケースを分析すると、問題はやはり、日頃の所長の経営姿勢に問題あり。
後者は、辞めたベテラン職員の給与を見ても、一般の税理士事務所の平均からも明らかに低額。
よくもこんな給与で10数年も我慢してきたものだという有様。しかも、所長は「金」への執着が強い。
承継後にお客さんが減るこんな例は本当に少ないのだが、「所長さん、あなたの事務所は大丈夫ですか?」
事業承継支援室長
大滝二三男
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