家業とはよく言ったもので、家族以外の従業員がいない事務所も少なくない。
今回の相談もその典型的な事例だ。
税理士さんは70代半ばで、病気がちになっていたここ数年。
実務は、70歳に手が届いた弟さんを中心に、奥さんとと30代前半の息子さんの3名。
息子さんは税理士試験に挑戦中だが、”戦績”は思わしくない。
実務のほとんどをこなす弟さんが、確定申告を前に、急な病に倒れ、復帰が絶望的に。
兄である税理士も当方に暮れ、この確定申告は何とか乗り切った。
ホッとしているのもつかの間、なんと一番若い息子さんが入院。
それも治療には、長期間になるという事態。
かねてより、自分自身の体にも自信が持てなくなっていただけに、今回は参ってしまった。
息子さんが資格を取るまで頑張るつもりでいたが、その気力にも限界に来てしまった。
そこで、息子さんが復帰し、その上資格を取ることが出来たら、息子さんに事務所を引き継がせたい。
その思いを理解してくれる先生に、”ピンチヒッター”として一時的に事務所を承継してもらえないかと考えた。
幸い、身近にそういう希望を聞いてくれる先生が現れ、その仲介役を依頼された。
言葉は悪いが、非常に虫のいい話だが、過去にもこれと同じような事例があるので、それを紹介。
このように家族だけで経営されていた事務所の場合、キーになる人が欠けると、一遍に瓦解してします。
息子さんが資格を取れなくても、先生が生きているうちは事務所は成り立つ。
しかし、今回のケースでは働き手が誰もいなくなり、先生もPCなど使えないから、まさにお手上げ。
常々、家族以外の従業員を雇っていないから、いざという時に頼める人材も一切なし。
とはいえ、”家内工業”だけに、辞める踏ん切りは、他人を雇っているときよりも、簡単であるのが救い。
今回はすっきり契約が終わり、先生も息子さんの治療に協力できる態勢が作れたことで、一安心。
それにしても、この間のお客さんに対するサービスの提供は、どうなっているんでしょうね?
事業承継支援室長
大滝二三男