市町村やその外局の公営企業などに対して、複式帳簿や固定資産台帳を義務づけることを総務省は力を入れている。
この制度を運用するに当たり、同省はその新しい基準モデルを作るに当たり、年内にワーキンググループによる検討が行われるという。
もちろん、これまでにも各市町村の10%程度が、この取り組みを行い、すでに固定資産税台帳などを整備している。
この実務を担当しているのが税理士事務所だが、その費用の安さと入札制度がネックになって、多くの税理士が取り組みに躊躇している。
実際に、これらの帳簿を作成するに当たり、単式簿記しか採用していないものを複式簿記で、書き換えるだけでもそのソフト自体が100%完成したものとは言えないもののようだ。
会計ソフトとしては試行錯誤で、バグが見つかるとそれを直し、バージョンアップを行ううちに、実用に最適なものが出来上がるというのは、まさに”常識”。
現状では、公会計そのものに取り組む市町村が少ないために、思うようにバージョンアップもできないようにも聞いている。
それにもまして、公会計を実際業務にしようとするときに、税理士事務所にとって最大の壁が”入札”制度。
もちろん入札制度には一切応じないという事務所もあるが、顧客獲得のためには入札の応ずることを拒否しているわけではない。
この公会計では、一度入札で落とすことができても、次年度が随意位契約で継続的に仕事を続けてできるのか、その点が明確でないため、二の足を踏んでいるのが実態。
会計ソフトなどを整備し、その専門家を育てることはしても、実際の仕事がないという事態にもなる。
仕事があって初めて人材を確保する労働集約型の業態だけに、仕事なあるのかどうかも分からない状態で、先行投資に慣れていない税理士事務所が、入札を避けるは当たり前。
それだけに派生業務にも目を向ける余裕の事務所が、随意契約を見込める分野のみには手を挙げることが可能であり、公営企業などの会計分野には手が挙がる事だろう。
しかし、市町村本体の会計には、新しい基準モデルができ、入札を経て、数年間の随意契約ができるようになれば、応札する事務所も増えてくるだろう。
業務の拡大に苦労している事務所にとっては、新しい”お客様”だが、問題の多いだけに”参加”できる事務所はあまり多くないだろう、今後も。
事業承継支援室長
大滝二三男