企業のM&Aは、債権債務を含めて引き継ぎが行われる。
しかし、税理士事務所では、引き継がないのが普通。
というのも、商品の売買ではないからだ。
債務は税理士の個人のもので、個人で清算すべきもの。
強いて探せば、未払いの職員の給与や退職金だろう。
かつて、退職金債務は事業承継で引き継がれると解説した税理士がいたが、これは現場を知らない証拠。
しかも、退職金債務を引き継ぎ、事業の評価は年間売上相当額で計算するというから、引き渡す側は万々歳。
これでは、黒字経営にもっていくには、相当期間が必要になり、引き継ぎ手も手を挙げない。
会計事務所の場合、退職金は中退金等を利用しているので、事務所を閉鎖したときに職員に支払われる。
引き継いだ事務所で同じく制度に入っていれば、新たに新規加入すれば、新事務所の退職金も確保される。
また、仕事が大好きな職員の多い事務所では、残業代に絡んだいざこざも引き継いだら大変。
中には、残業代が払われず、労基に駆け込まれて指導を受け、その債務を抱えたままでは、引き受けられない。
基本的なことだが、個人事務所で所長の気ままな判断で長年残業代を無視していた事務所の承継は、アウト。
問題を抱えたまま引き継ぐと、残業代の債務も引き継ぐ可能性もあるから、ここはしっかり確認すること。
代表的な債務だが、基本的に債権債務は引き継がないと契約書に明記してあれば、隠れ債務もクリア。
最も、会計事務所経営に絡む隠れ債務など聞いたことがないので、杞憂に終ることは確かなはずだ。