これまでに多くの会計事務所の事業承継をお手伝いしました。
その際、すべての先生から過去3年間の所得税の確定申告書と青色決算書を提出してもらいました。
ですから、この業界で税理士さんの確定申告書を、税務署、金融機関以外で一番多くチェックしているでしょう。
もちろん、金融機関は住宅ローンなどがほとんどでしょうから、事業そのものをチェックするための当社が最多?
それでも、赤字申告をしている税理士さんはほとんど見ません。99.99%が黒字です。
しかし、中には赤字申告をしている方を見受けます。ただし、税理士業務が赤字の原因ではありません。
いわば副業に手を出した結果、一般の中小企業と同様のアリ地獄に落ち込んで、赤字申告となったものです。
とはいっても、副業は株式会社などの別会社でやっていますので、自身の申告書は黒字が100%です。
この隠れた赤字を把握するのが、事業承継を思い立ったその理由を聞くことで判明します。
それでも正確に副業が不振で、謝金返済を迫られているなどと告白する人は皆無に近い。
廻りのうわさがこの情報不足を補ってくれます。例えば、広く不動産を扱っていたが最近は不振のようだなどと。
税理士さんは、自らの事業ではそれほど先行投資をすることなく、日々の”現金商売”がメインです。
新たな事業に資金を投入することなど、ほとんど考えられません。
例えば、ラジオやテレビのCMを流している事務所も、当然予算のうち。仕事が取れなくても余裕はあります。
また、業務が増えた結果、人材を募集するといったことですから、資金の裏付けはしっかりしています。
そんな中でつい最近、赤字経営に詰まって、資金的に追い詰められたという話を聞きました。
それも本業を拡大し過ぎて、顧問料も非常に低額にした結果、人員増加に資金が足りなくなったと言います。
そんなお人好しの税理士さんがいるのだろうかと疑いたくなりますが、どうやら事実のようです。
従業員にとってはしっかりした会計事務所に勤めたのだが、給与が遅配になったなどとなればどうでしょう。
関与先のそういった事態は見ることはあるでしょうが、会計事務所では起こり得ない事態です。
きっと、先生は業務を大幅に拡大できる、そのための積極策を講じたのでしょう。
でも、営業の数値をしっかりと把握し、早く手を打てば、それほどの赤字は出なかったはず。
これも、顧問先同様、手元をしっかりと見ておかなかった大きなミスでしょう。
一人親方事務所ですから、きっとブレーキ役もいなかったのでしょう。
何とか復活する道を探せること、情報が外に漏れないことを、祈るばかりです。
事業承継支援室長
大滝二三男