景気の落ち込みが、税理士事務所経営にも大きな影を落としています。
高齢の先生おひとりの事務所では、成長は当然ストップし、職員も高齢化しています。
そんな先生のおひとりに会いましたが、「職員が年金をもらえるようになるまで頑張ります」という。
職員のための経営を続けていらっしゃいます。
もっとも、ご自身ではもそれほど生活に資金を必要としませんので、職員のための経営を自負されています。
しかし、後継者を見つけるとなると、やはり問題があります。
それというのも、高齢化する職員たちの処遇を、若い後継者候補者が軽んじる風潮があることです。
もっとも、自分より年上の職員、しかも事務所経験も豊富な人たちを、”使う”だけの技量には不安もあります。
資格があるから後継者になる可能性があるわけですが、職員の協力なくして経営はできません。
高齢の所長さんが引退するときに、一緒に辞めてもらうのが一番いいとも考えます。
しかし、そんな都合のいい話ばかりがあるわけではりません。
自分で営業をして、事務所経営を盤石にした人であれば、職員に対する厳しい対応もできるでしょう。
まだ後継者候補としか認めてもらえない若い税理士に望まれるのは、経営力の向上でしょう。
税務実務では、会計・税務ソフトの普及で、極端な話だれでもできます。
高度な税法の解釈に関しては、やはり税理士の判断が求められます。
これは、一般的には日々の実務において遭遇する機会はほとんどありません。
したがって、事務所経営をいかに効率的に、高収益を上げられる手法を開拓する努力が必要でしょう。
先達の事務所を承継するにはそれなりの技量とともに、経営に関する哲学が求められます。
お客さんはよーく見ています。
「今度の先生は頼りないが、大きく成長する可能性がある。育ててやろう!」
こんなお客さんが数人いれば、事務所は安泰でしょう。きっと努力が実る時が来ます。
承継を検討している先生、どうかそんな見方で、後継者を育ててみてはいかがでしょう。
「税理士事務所に、税理士は自分一人でいい!」なんて言っていると、後継者ができず、枯れていきますよ。
そんな先生方をこの7年間で、たくさん見てきました。
幸い承継者を見つけることはできていますが、譲り渡した先生方が100%満足しているわけではありません。
まず、ご自身で後継者を育てることを、40代から50代の先生にお願いします。
このままでは、個人の税理士事務所は、大規模税理士法人の拡大傾向の中にうずもれていきます。
この波はおそらくこの5年間で一定の結論が出るでしょう。
その時個人事務所として、繁栄の道を歩んでいるかどうか、この苦しいときの対応次第で決まるでしょう。
事業承継支援室長
大滝二三男