税理士にとって、事務所はお城。
この”城の主”は明け渡す際に、お客さんに迷惑がかからないように、城を続けて使うように要請する。
当然、賃貸料を承継者は支払うことになるが、よほどその事務所が使いにくいなら別で、ほとんどが賃貸する。
もちろん、同じ地域の税理士個人が承継する際には、二つの事務所は禁止なので、賃貸は不可。
このようなケースはほとんどが税理士法人が承継する際の話で、いわば支店開設ということになる。
その際、事務所だけを借りることも少ない。というのも、承継後すぐに所長が引退しては客離れが起きる。
これを防ぐためには、譲り渡す側の税理士が後任の税理士とともに当分の間、一緒に仕事をする必要がある。
しかし、「私を頼りにしてきたお客さんたちだから、私がいなくなっては離れて行ってしまうよね」
と、譲り渡す税理士さんは言うかもしれないが、そうとも言えないことも、この7年間で経験している。
事務所の場所も変わらず、税理士もそのまま、さらに職員がそのままであれば、顧客離れはほとんどない。
所長税理士が承継後ただちにいなくなるケースでは、1割から2割の客が離れていく。
逆に言えば、税理士が予想する以上に客は離れて行かないという結果になっている。
しかも、事務所は変わらず、担当の職員がそのまま仕事を続けていると、9割以上の客がそのまま継続。
もちろん、今のような経済状況では倒産や廃業はどこにもある話で、これらの事情を外せば、顧客は残る。
なぜ、このようなことが起きるのか。
答えは簡単のようで、言葉を変えると、税理士事務所に企業経営者はそれほど期待をしていない。
税理士が代わっても、大きな期待をしていないので、事務所を代える必要はそれほどないという結果。
このブログを読む税理士さんは憤慨するかもしれないが、承継した事務所の多くの例からの結論。
でも、事務所はそのまま賃貸したほうが、承継者にとってトラブルが少なくて済む。
承継した顧客と十分なコネクションが出来上がった際には、新たな事務所に移転する可能性もある。
事実、承継後2年、3年経ってから新たな事務所に移転したケースも少なくない。
事務所と自宅が同一の区画にあるケースでは、ほとんどが移転するという結果にもなっている。
果たして、先生のところはいかがでしょうかね。
事業承継支援室長
大滝二三男