ネットの普及で、どこのいても帳簿を見ることができるようになっている。
これを大いに活用している、先進的な会計事務所の先生とある社長を訪ねた。
従業員10人、創業17年の企業だが、顧問税理士とは一度も会っておらず、職員が毎月来社する。
社員が打ち込んだ経理書類を受け取りに来て、その1週間度に月次決算の報告を置いていく。
社長にしてみると、税理士さんに会わなくても、職員が納得のできる説明ができれば、それでいい。
しかし、会計事務所の職員の出入りが頻繁で、早いときには数か月で、交代するという。
そのため、新人担当者に、同社の取引や経理処理の特殊性を一から説明しなければならないという。
この話を聞いていると、顧問税理士さんが当該企業の実情を把握しているかどうか、はなはだ疑問。
「たぶん、うちの名前を言っても、税理士さんは分からないでしょうね」と社長さんも諦めている様子。
そこで、月次決算や試算表の出具合などを聞いてみると、自計化している割には時間がかかっている。
さらに、提出される月次決算や試算表を社長に説明することなく、経理担当者に渡すのみ。
銀行融資を受けている関係上、銀行が要求する内容を盛り込んだ月次決算や試算表を定期的に提出。
返済が完了した都市銀行からは「私どもから社長さんのところに融資することは、もうありません」の最後通告。
それだけに中途半端な資料を銀行に提出することは、ご法度だが、現在の事務所ではもう無理。
そう結論付けた社長さんからの要請で、地域一番店のある地方の税理士さんを紹介したわけ。
その税理士さんの職員教育がしっかりしており、ITにも真っ向から取り組んでいることで、顧客を虜に。
そんな事務所の税理士さんからすると、現在の顧問税理士事務所の”巡回”の内容はお粗末そのもの。
メールやネットを利用した月次決算や試算表の説明などは十分。
経営者にとって一番の心配は、キャッシュ。紹介した税理士さんはまずこの点からチェック。
2か月、3か月、そして6か月後のキャッフローを確実につかむための方策を一緒に考えようという姿勢。
これまでの17年間、顧問税理士からの提案を受けていない社長さんにとっては、目からうろこ。
「自分は6か月、1年後の売り物を考えているので、毎月の経理内容のチェックをしたいない」
そんな資料を紹介した税理士さんが提供してくれることが分かり、「これで心配なしだ」
業績については、企業の責任だが、少なくとも現状、キャッシュフロー見守ることは税理士さんにはできる。
「その説明を毎月きっちりと行い、銀行にももう融資はしませんなどと言わせないようにしましょう」
その税理士さんからの提案。本当に可能かどうかは定かではないが、これには社長さんも大きくうなづいた。
やり取りを聞き、税理士さんの仕事の重要さを再認識した次第。当たり前のことと言われればそれまでだが。
サービス業としての税理士事務所経営、上から目線でやっている税理士さんには厳しくなる一方だ。
事業承継支援室長
大滝二三男