「開業に際して、税理士会支部長さんから事業承継のお相手を紹介されたので、今回は私からどなたかにお渡ししたいのです。是非候補の方を紹介してください」
事業承継をそろそろ考えていると言う先生とのお話のなかで、こんなご要望が出されました。
「この地域では若い人も知りませんし、支部に話そうかとも考えました。でも、これまで数々の事例をこなされたエヌピーさんなら間違いないと思い、来ていただいたわけです。」
税理士会支部に話を持っていっても、ご自身の要望を受け入れてもらえる可能性は少ないと考えられたようです。もちろん、支部では相互扶助の精神で処理するでしょうが、相談者の希望を十分かなえられるのかどうか。
しかもそこには金銭の問題も絡んできますので、税理士会支部としても慎重にならざるを得ません。いらぬ噂で、役員が勝手に処理しているなんて言われることもあり、役員としては触りたくない問題でもあるでしょう。
たしかに事業承継は微妙な点が数多くありますから、契約書などを作らずに「よろしくお願いします」「こちらこそ」の口約束では、二進も三進も行かなくなるときが必ずやってきます。
やはり、仲介者がいないと、言いたい事も言わずに話がどんどん進み、気づいたときには、”縁談”を中止せざるを得ない状況まで悪化するケースはよく見受けられます。つい最近もそんな話が舞い込みました。
これには委譲する側、そして承継する側が、その希望・要望などを率直に話し、受け入れ可能かどうか慎重に双方が判断すべきですが、中途半端な形で結論だけが先走り、実務段階で暗礁に乗り上げることもしばしばです。
こうなってから絡んだ糸を解きほぐすのは、ほとんど不可能になり、結果、”破談”となり、気まずい関係が出来上がってしまいます。
引退を考え、若い先生にバトンタッチの交渉が決裂した先生から、「もう私には相手を探す元気も、交渉する気力もなくなったので、どうかいい相手を紹介してください」という依頼です。
事務所の状況を把握すると、弊社としてはそれほど難しい話ではなく、3ヶ月もすれば契約まで持っていける内容。それだけに、委譲する先生の腹ひとつで、すべてがうまく行くのですが、さてどうでしょうか?
事業承継支援室長
大滝二三男