ご家族の反対などではなく、事務所を閉鎖したくても、それができないという事例です。
事務所の職員と所長さんは一部運命共同体。職員が辞めればいつでも補充は利くという事務所ならいいのですが、新しい人を入れる気力がないという先生には「もう辞めたい」という気持ちにもなります。
ところが運命共同体で、職員の生活を考えると、辞めるに辞められないという先生からのご相談がありました。
職員の方は60歳を超えていますが、お子さんが小さく70歳までは稼がなければ、子供を学校にも行かせられないという。その人のことを考えると、年々お客さんが減少し、ご自身もやる気が失せていはいるのですが、どうしても事務所を閉鎖することができません。
そこで、他の事務所にお客さんとその職員を任せたらどうですかと、お相手も見つけてご連絡をしたところ、職員がいやだというので無理だとの回答。
よーく聞いてみると、その職員はほとんど自分でお客さんの情報をしっかりと抱え込み、売り上げだけを事務所の報告、もちろん顧問料は事務所に入れるものの、その大半を給料としてもらっている始末。
顧問先の情報を把握していない先生としては、職員がノーといえば、それを押し切る力はほとんどなし。自らの担当だけでも譲り渡そうともしたが、そのなると、職員は偽税理士状態。それはいかんと、自らも事務所を継続。
その職員のためには最高の方法かもしれませんが、こんな状態がこの先10年間も続くのだろうかと、他人事ながら気が滅入ってしまいます。先生もう少しクールになってくださいといえど、先生の気も変わりません。
相談を受けたことで、なんでそんなに温かく見守ることができるのだろうかと、変な憶測までしてしまう始末。自らの狭量さを恥じることにもなりました。こんな先生がほかにもいらっしゃるのでしょうね。
事業承継支援室長
大滝二三男