38歳の勤務税理士さん(正確には勤務する事務所では資格を持った事務員)からの相談がありました。
所長さんと二人だけの事務所。ご自身は資格があるが、事務所では登録をせず、自宅を登録地としているとのこと。その理由は、所長いわく、「事務所に二人の税理士はいらない。」
昔聞いた覚えがありますね、この表現。先生、つまり権威者は一人で良いんだというわけです。お客様にご自身だけが頼りがいのある人間だと言いたいのでしょうかね。
その若者の主張は、数年後には事務所を譲ってもらえるはずという。ちなみに、その所長税理士は80歳をはるかに超えた国税出身者。
実務はどう処理しているのかと聞けば、すべてその若者がやっているという。それでは「所長先生は?」と聞けば、老人養護センターで寝たきりだという。
「???」そんな所長には、「税理士としての責任を果たすことはできないはずでしょう?」と問えば、「生涯税理士としての立場を全うしたいというのが、所長の考えです」という。
「お客さんが良く我慢してますね」と尋ねると、「たいした期待もしていないと思います」との返事。そこで、相談内容ですが、「どこか承継できる事務所はないでしょうかね」という。
何でしょう。寝たきりで、税理士という肩書を持ったまま、あの世に行くという、税理士さんの下で、所長さんの死に水も取りそうもない若者が何を相談するのでしょうか。
とにかく、今の顧問先の方々にできる限りのサービスを提供し、もし顧問先に未来があるのであれば、一緒にその先を追い求める度量がないのであれば直ちにその事務所を去るべき。
寝たきりの税理士には顧客の要求に応えることができないのだから、そこ事実を率直にお客様にお知らせし、自らの責任でサービスを提供することを宣言すべきではないだろうか。
これは、世情いわれる乗っ取りと判断されることはありません。所長さんの家族には資格を持った職員としてはっきりというべき責任があると思います。結論はそうお伝えしました。
事務所の収入を考えても、所長さんのご家族がその収入に頼っているとは思えません。一日も早く、資格を持ったその青年が事務所を引き継ぎ、その責任を果たすことを願うばかりです。
事業承継支援室長
大滝二三男