税理士事務所は法人企業、そのなかでも顧問先としては個人企業に近い法人企業のがほとんどです。税理士さんと社長さんとの距離が本当に近い関係です。
多くの税理士さんたちが、顧問先の個人企業を法人なりさせたのは、ここ30年のことでしょう。そこには個人企業と法人との税金の比較があったからです。
今となっては、法人企業の多くが赤字ですから、税金面だけを考えた法人なりは考えられません。むしろ個人のほうが税金が安くなることもあります。
ですが、一度法人なりした企業が個人企業に戻ることはほとんどありません。社会的な評価が一番です。やはり、法人のほうが公共性があるのでしょう。
とはいっても、法人なりをしたからといって、所長さんたちが『公私の別をはっきりしている』とは言いにくいのが実情です。
税理士事務所の事業承継を容易にするためにできたのが、税理士法人制度です。これは法律案を作った大武健一郎元国税庁長官もはっきりそう証言しています。
個人事務所と法人ではなにが違うのでしょうか。実は税理士法人は合名会社ですから、株式会社と異なり、原則、役員がそれぞれが一人一票の制度です。
ですから、税理士法人になるまでは、ワンマン所長の”独断と偏見”ですべての経営方針が決まりましたが、役員会の結論を待たなければならなくなります。
厄介です。とくに事業承継の案件については、お決まりのように、社員たちは反対をします。厄介なことを背負いたくない役員たちはやはりノーです。
経営に関する決定が法人化によって、スピードが鈍ることは間違いありません。スピードが落ちることで、税理士法人の経営インセンスが問われます。
経営者が一人の時には、すべての責任を所長さんが取ればいい。でも、税理士法人はすべての役員が責任を取りますから、いやなものには判を押しません。
ここが、顧問先の法人と税理士法人の異なるところです。「今までどおり、私が責任を取ります」と個人事務所の所長さんが行っても、顧問先はどうでしょう?
所長さんと永年のお付き合いをしている経営者の方であれば、この話には回答は簡単です。『社長、法人になっても変わらずサービスしますよ』
個人事業主の先生、やはり、自らも法人になったほうが良いのではありませんか? 税金の額など考えないほうが良いのではないでしょうか。個人のままで?
事業承継支援室長
大滝ふみお
でした。