昨年も3万人を超える人が自らの命を絶ちました。もう10数年続いているのではないでしょうか。
首都圏の電車に乗っていますと、「〇〇駅の線路に人が立ち入ったとのことですので、安全を確認するため運転を見合わせます」といった車内放送を頻繁に聞くことができます。
線路に人が入っただけで、山手線全線が止まってしまうのです。もちろん、その実態は自らの命を絶つ行為、つまり飛び込み(投身自殺)、その後始末のため、2,3分間隔で走っている電車を止めざるを得ないわけです。
プラットホームから迫り来る電車に飛び込む人にはさまざまな理由があるでしょうが、なんとも迷惑千万な話です。でも、明日はわが身かもしれません。
そのバックグランドに日本人の人生観があるのかも知れませんが、資金繰りに悩み、万策尽きた企業経営者が自分が死ねば生命保険がおり、借金もそして家族も救われると考えたらどうでしょう。
たしかに、そんな高額な保険金が手にできる保険商品があります。しかも、会社の経費になる契約があるわけで、掛け捨てとはいうものの、いざとなるとこんなに頼もしい(?)保険商品はありません。
でも、経営がうまくいっているときには、もし経営者の自分に万一のことがあったら、家族はもちろんのこと従業員にも迷惑がかからないようにと、生命保険商品を購入するのは至極当然のこととしか考えないでしょう。
ところが、事業が左回りとなり、毎月のように小口の資金を融通してくれていた金融機関から、「今後はご融資できません」といわれ、社長個人の資産も担保に取られて、資金繰りが暗礁に乗り上げたら。
もちろん、そこにいたるまでには家族はもちろんのこと、一族郎党からも借りられるところからは借り尽くし、万策尽きたところ。それまでアドバイスできる人がいるはず。「もう社長、辞めましょう」と。
それができるのは、毎月の資金繰り、現金・資金の状況をしっかり把握している会計事務所ではないでしょうか。「そんな深い付き合いはしていません」と言われてしまうとそれまでですが、はたしてそうでしょうか?
先日も死ぬか、生きるかとここ数ヶ月取引先とのトラブルに血の吐くほどのご苦労をしている経営者の方から「会計事務所のコンサルは単なる数字だけのコンサルで、なんら経営上のサポートはありません」という。
もちろん、黒字経営をするための未来会計をしっかりと指導されている会計事務所もあるでしょうが、経営者を対象とした保険契約を取ることで収益を挙げようとしている事務所も少なくありません。
その生命保険を頼りに経営者が自らの絶ったとしたら、会計事務所経営者も寝つきがよくないと思いますが、中年の会計事務所経営者自らがこの死亡保険金を目当てに自らの命を絶ったことがありました。
そこで、私見ですが、この経営者を対象とする保険の支払い条件で、自殺の場合には保険金を支払わないようにすべきではないでしょうか。そうすれば掛け捨てにしなくてもいいのではありませんか?素人考えですが。
それより何より、日本人の倫理観、自らの命を絶ってまでも借金を返さなければならない。それが正義だなんて。お金のことを考えずに、事業承継ができる先生たちはまだまだ幸せなんですね。
事業承継支援室長
大滝ふみお
でした。