一昨日、米国のロサンゼルスの南西に位置するトーランス市のH&Rブロック社の事務所に勤務している日本人EA(米国税理士)の方が来社され、日本国内での仕事について情報交換をしました。
トーランス市にはトヨタやホンダの米国のヘッドオフィスがあり、その他多くの日本企業の工場などがあるところから、日本人に関係の深い都市ですので、日本人の経営する飲食店も沢山ありますが、この不況で四苦八苦のようです。
彼の勤めるH&Rブロックの事務所は、1月15日から4月15日までの所得税の確定申告シーズンのときだけ開店する臨時の事務所で、それ以外は地域の主管店で総務などの仕事も併せてこなしているそうです。彼税務申告書の作成料金は1通600㌦で、3ヶ月間で約200人のお客さんがいらっしゃるそうです。
そこで、日本の税理士と米国の税理士の比較をして見ます。
資格取得法
日本 ①国税庁所管の税理士試験(5科目)に合格
②税務職員および地方税担当者の特別試験合格
③公認会計士、弁護士の税理士登録
米国 ①IRS(米国歳入庁)所管の米国税理士試験(3科目)に合格
②IRS職員の特別試験(直前に現業経験が80%、税務署長な どの行政職は現業とは認めていない。これを満たさない 場合は①の試験を受ける)
③公認会計士、弁護士も税務申告の代理ができる。(米国税 理士ではない)
税務代理
日本、米国とも同じ。
申告書の作成
日本 有償では税理士出なければできない。
米国 有償で資格がなくてもできる。
所得税の確定申告
日本 2月16日~3月15日
米国 1月15日~4月15日 最大10月15日まで延長可能
確定申告書作成費用
日本 相談はゼロ、価格は一定せず。
米国 老人などには学生などのボランティアで無料作成。H&Rブロ ックなどの申告書作成業者95㌦~1000㌦、米国税理士おお むね150㌦前後。EA200㌦~1000㌦、平均で400㌦
確定申告書作成数
日本 一事務所 100~200通が平均
米国 米国税理士1人当たり 500~2000通
年間の業務
日本 1年中
米国 半年、残りはボランティア活動や税理士会活動
米国の税理士のなかにはここ数年、スモールビジネスの記帳代行やペイロール、さらにトラストの支援などにも手を広げてきているので、年間を通して仕事をする人が増えています。しかし、多くの米国税理士は半年稼いで、後の半年は好きなことをしているといっても過言ではありません。
税法に精通した米国税理士は、盛んに行われるセミナーの講師として全米を駆け巡っていますが、これは日本でも同じですね。
弊社を訪問された日本人の米国税理士はまだ5年の経験ということですが、50代になってそろそろ日本に帰ってこようとお考えのようで、国内で米国税理士の活躍の場があるか、ということを調べるためにこられました。
国内においては、若い方なら米国の監査法人が手を上げるかもしれませんが、やはり職場はないと申し上げましたが、今後電子申告は普及し、年末調整がなくなり、全員確定申告になったときには米国流の申告書作成業者が許可されるかもしれません。
そのときにはH&Rブロックで経験されたことがきった役立つことでしょうし、米国税理士同様、日本の税理士も半年だけの業務で十分になる人も出てくるでしょう。小泉・竹中政権がやろうとした米国流が税務の世界にももうすぐやってくるでしょう。
長くなりましたが、今般の不況による不安感を米国流の”皆確定申告”を黒船来ると危機感を持つのか、それとも将来の税理士事務所経営の安心策と考えるのか、答えは10年後には出るでしょうが、それにしても”いま”を乗り越えましょう。
事業承継支援室長
大滝ふみお
でした。