税理士法人制度ができて15年、創業者=代表社員の図式もかなり変わりました。
15年前に法人化した税理士事務所は、すでに業界のリーダー的存在が多かった。
その後、親子や親族が主体の税理士法人も続々と誕生。
支店展開するための法人化も増え、東京に支店を置く法人も増える一方。
そんな中で、創業者が引退若しくは死亡するなどの原因で、社員税理士の条件が欠落。
そもそも社員税理士が2名しかおらず、一人掛けたことで、要件を満たさなくなる。
実際、社員税理士の死亡で、社員税理士探しに四苦八苦している法人もある。
結果、社員税理士に就任する税理士が見つからず、個人に戻る事務所も出ている。
個人事務所に戻った事務所の中には、他人同士の法人で瓦解したものもある。
主導権争うもあるだろうし、業務習慣の違いを克服できないところももちろんある。
職員同士が違った環境で育っているので、融和するのも時間がかかる。
さらに人間関係も所長を中心にしたものから、組織に移らざるを得なくなる。
そこに職員間の軋轢も生じ、辞める辞めないの気まずい関係が続くことになる。
こうなると、上から指導をしても、なかなか修復できるものではない
また、所長として孤独だった先生が、友人との共同作業に向かないこともある。
一方で、事業承継するために法人を設立し、社員税理士にその器がないと、破談にした例も。
同時に経営感覚がない社員税理士に将来を任せたくないと、仲介を依頼する例も増えている。
実際にこの2年間で数件の案件をこなしてきたが、その理由は、後継者としての能力がないという。
まさに個人事務所の勤務税理士と同じ理由で、法人の経営は任せられないというのだ。
勤務税理士の場合、そもそも所長にはならないと決めている人も少なくない。
そんな人は社員税理士にもならないから、所長もほかの税理士を探し、法人を設立。
気心の知れたと思っていた人が、全く違った面を見せられ、信頼を失う例もある。
信頼を失った社員税理士同士が背を向けあっていては、組織は止まってしまう。
そんな失敗をした法人の経営者が、弊社にサポートを依頼されることになる。
もちろん、弊社としても、社員税理士候補を紹介することはほとんどできない。
一度失敗している先生も、まず自分で探すという作業にうんざりしている。
そんな時に相談に来られる先生には、ほぼ法人の支店化をお勧めしている。
二度と嫌な思いをさせないためにも、先生には腹を決めてもらう必要がある。
後継者に裏切られたトラウマを抱えた先生には、その手法が一番いい。
ご家族も納得されるケースが多く、ご主人の悩める姿をもう見たくないという。
高齢の先生には、ご家族も「もういいでしょう?ご苦労様でした」と声をかける。
なかには激昂する先生もいるが、独りになると、「それもいいか!」と納得。
そんなに簡単に腹が決まるものではないが、決まれば早い。
後はのんびりできる社員税理士として、事務所のお客さんに笑顔を送る。
そんなところから、税理士法人そのものの事業承継の依頼が来ているようです。
事業承継・M&A支援室長
大滝二三男