体を壊し、病院通いが数年間で続き、甥が税理士になったのを機会に承継を目論んだ。
40代の新所長が仕事しやすいよう、定年を迎えたベテラン2人に身を引かせた。
当然、担当者の交代を顧問先に十分説明させたはずだったが、納得が得られない顧問先も。
その上、信頼していた所長からの新所長の紹介もなければ、新所長の挨拶もない。
病いで動けない所長にしてみれば、甥が積極的に挨拶回りをしているものと思い込んでいた。
所長にしてみれば、自分の病状を含め、新所長の紹介文書を顧問先に送付。
それだけで顧問先は分かってくれるものだと、大いなる勘違い。
顧問先にしてみれば、気心の知れたベテラン担当者はいなくなり、所長も代わる。
しかも、所長交代の挨拶状を送り付けるだけで、新所長も挨拶に来ない。
結果、契約解除の通告が次々に舞い込み、新所長はなすすべもなく、辞職。
多くの顧問先を失った所長は、職員の生活を守るためにも、病をおして現場に復帰。
自らの配慮のなさを反省すると共に、残った顧問先にお詫び行脚の日々。
今になってみれば、顧問先の信頼の厚かったベテランを切ったのが間違い。
復帰してもらいたいと声をかけたが、二人ともつれない返事で、やむなく所長も顧問先回り。
十数年ぶりに訪問する顧問先では、社長も冷たい対応も、じっと我慢。
実際の起こったこの事件、他山の石として、事業承継の参考にしてはいかがだろう。
事業承継M&A支援室長
大滝二三男