初老の先生の税理士事務所は、ここ数年、新規の顧客を増やしていない。
職員の担当も変わらず、お客さんからの刺激はゼロに近い。
改正税法などに詳しくなっても、お客が求めるのは、相変わらず記帳代行。
入力担当のパート社員も、決算書まで作成できる。
担当は決算対策・処理などを顧問先と所長と打ち合わせ、申告書を作成。
毎月の決算を正確にやっていれば、最終決算も面倒はない。
特別に事業承継や再生などがなければ、ルーティンワークは楽なもの。
また、短期・中期の経営計画などに力を顧問先も少なければ、刺激なし。
融資の相談も、決算指導を事前に行っているので、これまたクリア。
担当者にしてみれば、新しい業務がないだけに゛やる気゛も減退。
いつもの通りの業務をさらりとこなし、毎日が過ぎていく。
所長から新規の顧問先を取ってこいとも言われず、地位も安泰。
もちろん、所長自身が職員任せで十分と考えていた節もある。
ところが、所長が身を引くことを考えたとき、不安がよぎった。
自分が辞めるのはいいが、はたして職員は対応できるのか?
現在の自分では、職員の士気を上げることは不可能に近い。
そんな状況で、中堅職員の働き甲斐を満足させているとは考え難い。
そんなジレンマを打ち破る解決策は、成長を続ける法人との統合。
所長自らも、まだまだ精力一杯動ける自信もあり、殻を打ち破った。
もちろん、社員税理士として、お客さんの話を組織に反映。
新たなメンバーと共に、総合的なソリューションを検討する。
組織を挙げての対応策協議のなかで、眠っていた職員も目を覚ます。
そこで十分対応できる能力アップが図られれば、これで安心。
初老の所長は、引退の道筋がはっきり見えてくることになる。
ここまで所長が考えた末の経営統合、じっくり見ていきたい。
事業承継・M&A支援室長
大滝二三男