高齢の税理士さんの事務所のリスクは、顧客も高齢化していること。
そんな顧客が次々と廃業や清算となれば、承継の効果はなくなってしまう。
顧客だけでなく、職員も受け入れれば、赤字経営にもなりかねない。
しかし、これまでの事例で顧客が大幅に減ったというのは、ごく少数。
税理士が顧客の信頼を失っていたことが判明したのが、この例。
引き継いだ事務所の先生が顧客に挨拶に行くことを、先生は拒否。
自分で承継してもらったことを、顧客に説明すると強弁した。
そこで、新たな担当者が先生に同行することは同意し、顧客を訪問。
そのときの顧客の反応は、冷たく「先生は断ろうと思っていたんだよ」
さらに、「勝手に決めたんでしょう。私は自分で先生を探すよ」
とりつく島もなく、契約破棄を告げられたという。
先生も「このお客は前々から、良い客じゃなかった」と、負け惜しみを言う。
さらに、数件の顧客のもとに説明に行くが、ほとんどがしらけた対応。
同行した担当者から報告を聞いた所長は、先生を追及。
これに対して、自分は誠心誠意対応し、顧問先は満足していた。
契約解除を言っている客は、自分が思い止まるよう説得すると主張。
これを聞いた承継者は、しばらくはお手並み拝見と決め込んだ。
その後、数回顧問先を訪問した先生からは、良い返事は報告されなかった。
さらに、決算を数か月後に迫っていた顧問先も、新たな契約は結ばない。
決算が終わった時点で、承継者との契約は継続しないと言ってきた。
なぜか、「あんな先生が紹介した事務所と契約はできない」とキッパリ。
顧客からこれほど嫌われている先生のことを、聞いたことはない。
全く信頼されていない先生を雇う形で承継したが、その効果は全くなし。
最終的に数か月後には、承継できた顧客は1件で、先生の雇用も拒否。
この事例の経過報告を受けていた紹介者として、おおいに反省。
だが、事業承継支援業務で、先生と顧客の関係を詳細につかむのは無理。
承継者を探す先生から伝えられる情報を信じるしかないのは、実際の話。
この事例で支援室として、観る目がなかったことを痛感。
それ以来、先生からの情報を、冷静に判断するよう心がけている次第。
そうすることで、引き継ぎ者のリスクを最小限におさめている。
事業承継支援室長
大滝二三男