ここ数年、会計業界にもPCのクラウドの波が押し寄せています。
税理士のなかでもITに詳しい人は、いち早くクラウド会計を採用。
会計ソフトベンダーも漸く、顧客の囲い込みでクラウド大作戦を展開中。
熱心な税理士の中には゛伝道師゛として、同僚に導入を奨める。
そんな役割をこなしている税理士に、導入実績を訊いてみた。
セミナーなどに積極的に参加する事務所でも、何故か導入に躊躇する。
その理由は、データが事務所に存在しないのが、まず不安。
クラウドでどこかに行ってしまい、無くなってしまうのではないか。
そうなると、顧客の秘密を暴露することにもなり、これは大変。
クラウドでは、持ち運ぶノートパソコンには、実際データは存在しない。
そのデータは登録されたID、パスワードで、クラウドから出し入れする。
もし、ノートパソコンを紛失しても、実はデータは散逸しない。
実際は、クラウド上のデータをパソコンで操作しているだけ。
この辺りで躊躇しているようでは、クラウド会計は利用できない。
しかし、顧問先には、生きた数値で経営を報告・解説する必要がある。
これも臨場しなくても、これらの業務をこなせるのが、クラウドの特徴。
数値は、税理士と顧問先が同時に見れるので、どこからでも説明可能。
これらのメリットがあるが、実際導入の不安を訴えるのは、誰だろう。
顧問先の経理担当者だろうか?
顧客とメールを積極的に利用している職員が、はたして反対するだろうか?
お金の流れもPCで行われるので、帳簿の作成も簡単で、効率的。
だから、企業の立場からすると、クラウド会計は導入しやすいはず。
もちろん、ITに弱い担当者では、導入に躊躇せざるを得ない。
しかし、今やスマホでデータをやり取りできるだけに、抵抗感は少ない。
それでは、導入の壁は何だろう。
さきの゛伝道師゛に聞いてみると、その高い壁は会計事務所が建てていた。
クラウド会計では入力業務などが大幅に省力化され、記帳代行が減少。
そうなると、会計事務所は顧問料を下げるといった事態を招く。
事務所の収入減に繋がるようなことはしたくないのが、本音。
記帳代行以外はすることがない顧客ばかりだと、確かに苦しいだろう。
さらに、ITに腰が引けている事務所では、ハードルは確かに高い。
どうやら、クラウド会計の゛敵゛は、最も身近な所にあった。
そう、会計事務所こそが、導入の壁だと言うわけだ。
早く導入を行わないと、人材不足のこの時代、乗り切っていけませんね。
事業承継支援室長
大滝二三男