税理士一人で運営する事務所が、実は圧倒的に多い。
実際に職員が50人を超える事務所でも、資格者は所長一人だけ。
そんな事務所もあるくらいで、業務を監督できるのかどうか、心配になる。
その一方で、職員は数名で、先生の指導・監督が徹底。
すべての顧問先に先生自ら顔を出し、丁寧な業務を展開する。
このような事務所では、資格者を雇う余裕はなく、先生の健康が頼り。
先生に万が一のことがあると、たちまち事務所存亡の危機に陥る。
例えば長期の療養が必要になる病にかかると、職員も病院通い。
病床の先生の指示・了承を仰がなければならず、混乱は避けられない。
しかし、このような事態が起きる前に、対策を講じる先生もいる。
後継者となる資格者を採用しなかったツケが、感じられるのもこの時。
資格者を採用するのだが、後継者として適格でなければならない。
同業者に優秀な資格者の紹介を依頼しても、反応は鈍い。
依頼された同業者にしてみれば、優秀な人材は離したくないのは当然のこと。
そうなると、人材紹介業者などに依頼するのだが、なかなか見つからない。
確保できたとしても、2、3年はその力量を図るため時間が必要。
そこで100点満点であれば良いのだが、これまた合格点は出にくい。
さらに良い人材がいるはずと考えると、いつまで後継者は決まらない。
この時点で、先生に育てるという意識が働けば、さらに時間が必要になる。
もう、堂々巡りで、後継者として入った資格者も早々我慢ができない。
後継者と決めたら、仕事は任せる。
そうでなければ、共に働いてから後継者を決めるのは、止めた方が良い。
後継者を育てられなかった自分が悪いと、諦める必要があるかも。
また、高齢になってから事務所の将来を考えるのは、職員にとっても酷な話。
だから、後継者のいる事務所との経営統合も選択肢のひとつだろう。
それも法人との経営統合であれば、将来的にはサラリーマン経営の組織に。
アクの強い創業者の個人事務所から、会社組織の事務所に変貌。
数年先には、大規模な法人が各地に生まれている気がする。
その時には、組織内部の権力闘争もあるだろうが、そこで後継者も決まる。
こんな展開がありそうだが、今はまだ後継者探しが続いているのが現実。
創業所長の先生は、そこからなかなか抜け出せずにいる。
事業承継支援室長
大滝二三男