企業のM&Aの場合、資産等を含め株価を中心に評価を決めるのが普通。
その他、業界における企業の将来性等も加味される。
これに対して、税理士事務所の場合はどうだろう。
個人事務所を考えると、もちろん株はないので、何を評価するのか?
税理士個人の実績を評価するしかないので、売り上げが対象になる。
だから、税理士会で役員を勤めた実績は、一切加味されない。
逆に役員を長く勤めると、事務所経営が疎かになることもある。
結果、事務所の運営が職員任せになり、顧問先が増えないこともある。
こうなると、売り上げを評価基準とすると、マイナス要素にもなる。
その一方で、会の運営には一切関わらず、業務に邁進するタイプもいる。
地域一番店になっている事務所の場合、会とは、ほどほどの付き合い。
所長が会の役員をしていても、事務所をしっかり掌握している。
所長の不在中も事務所を運営できる゛代役゛が、目を光らせている。
そんな事務所だから、事務所も成長し、地域一番店を確保している訳。
これまでの仲介で地域一番店の承継でも、これは証明されている。
このような事務所の売り上げを見ると、一人1千万円近くになっていた。
中には、平均を大幅に上回るり、2千万円を超える事務所もあった。
このような事務所の評価は、売り上げだけでなく、所得も加味する。
一人当たりの売り上げが多いところほど、実際所長の所得も多い。
だから、事務所の評価も当然高くなる。
さらに、このような事務所には、必ず優秀な゛人財゛が働いている。
これは、所長から職員の評価を聞いた段階では、はっきりしない。
しかし、承継後に共に働き出すと、その事実を確認することができる。
実際は、優秀な人材を確保できた承継者にとっては、儲けもの。
先の先生には感謝、感謝の気持ちになるのも、売り上げよりも人材だ。
この反対に売り上げはほどほどだが、所得が少ない場合はどうなるか?
所長の年齢と共に、職員の給与の割合が高くなり、所得が減る。
これは、明らかに評価ではマイナス要因になり、承継後も懸念材料に。
果たして、職員が給与にかなった業務を行っているのか?
さらに、新しい組織で熱意をもって業務に邁進できるのか?
そうさせるのは、新しい経営者の役目だが、事務所の評価は下がる。
これらの点ははっきり数値で現れないが、慎重に評価を行うことになる。
さらに、承継後の客離れの予想も、大きく見なければならないことに。
このように事務所の評価は、様々な要素を見ながら決定する。
当然、承継の両者の意見も加味しながら、妥協点を見い出すことになる。
両者が納得して、初めて評価が決まることになるわけだ。
事業承継支援室長
大滝二三男