税理士事務所の給与は安いというのが、定説になっていた。
それというのも、勤務するなかで試験勉強を認めてもらえるから。
業務を終えてから、予備校へ行くことも認められている。
そうなると、残業もできなくなるから、給料も抑えられる。
言ってみれば、見習い期間の延長と考えられなくもない。
経営者にとって、だらだらと残業されるより、早く仕事を終えて欲しい。
当然の管理体制だが、外回りの職員はどうしても仕事が遅くなる。
というのも、顧問先から資料などを受け取り、帰社が夕方になることも多い。
帰社から記帳代行、パソコンへの打ち込みが始まれば、どうしても残業に。
最近は外回りの職員が打ち込みをせずに、専門の職員に任せる。
そのため、入力専門の パートを雇っている事務所も少なくない。
こうなると、外回り職員が遅くまでパソコンに向かうことも避けられる。
顧問先担当者は、受け取った資料から経営情報などをまず把握。
その上で、経営指導に必要な資料などを参考に、的確な提案事項を把握する。
税務処理のための情報は、顧問先に説明し、事前対策は万全にする。
そのための残業であれば、ある程度理解できるが、記帳だけは如何に?
これまでの仲介業務の中で、ビックリするほど残業代が多い事務所もあった。
確定申告時や3月決算法人の申告時期に残業が多いのは、普通だ。
しかし、毎月のように給与の30%が残業代という職員がいる、事務所が出た。
もちろん、全員が毎日のように残業しているケースは、ほとんどない。
一部の職員だけが、毎月10~20万円の残業代を受け取っているのだ。
しかも、勤務歴の長い職員ほど、残業が多いというビックリする状況。
普通の企業であれば、勤務歴が長い人は管理職となり、残業代はつかない。
職制がはっきりしない税理士事務所では、管理職は所長のみ。
仕事の内容も、勤務歴に関係なく、同じ業務をこなす例が多い。
管理職は所長のみで、一般職員はみな平職員といった感じ。
しかも、所長の許可があって初めて残業代が出る形にはなっていない。
果たして、職員と所長の間で、労働協約は出来ているのか。
このような労働環境にある事務所引き継ぐとなると、これは大変。
残業代が職員の生活費となっているだろうから、これをカットできるか。
事業を承継する際に、残業の多い従業員の同意が得られるだろうか。
また、同意が得られない場合、その職員が辞めても、顧問先は離れないか。
離れた場合、承継する価値が残るのだろうか。
まさに、労働生産性が低い職員は切りたいところだが、果たして切れるか。
このような事務所では、職員別に生産性を見ていないだろう。
事業を承継しようという税理士(法人)には、この点が重要。
仕事の内容もに応じて給与を払う、でも残業代が稼ぎは不要。
さて、残業をさせるのは所長、その所長がしっかり管理できていない。
今からでも遅くありません。しっかり業務を見直しましょう。
そうでないと、良い引き受けてはなかなか出ませんよ。
ごく最近の事例からのアドバイスです。
事業承継支援室長
大滝二三男