税理士の顧問料を羨ましいと、はっきり言う弁護士が多い。
というのも、弁護士は企業などの顧問料だけでは、事務所は維持できない。
弁護士の収入は、その性質上、ほとんどがスポットの仕事からのもの。
それに比較して、税理士の顧問料は、顧問先全てから毎月一定額が入る。
そのほかに、相続・贈与案件や年一決算などのスポット収入がある。
このスポット収入が多い事務所ほど、規模も大きくなるのが普通。
毎月の顧問料で職員を雇うことができるのが、税理士事務所の強み。
スポット収入は、いわば付加価値ビジネスの繁栄と考えられるわけだ。
昨年の相続税大増税で課税最低限も大幅に減額され、これで多くの”商機”が生まれた。
中規模以上の事務所で”相続部隊”を組織しているところは、スポットのウエートが高い。
それというのも、ここ数年の景気の低迷で、顧問料自体がダウンした影響があるため。
そんな中でも、事業承継によって顧客を増やしている税理士法人も少なくない。
今まさに事業を譲りたいと希望される税理士の多くが、経済成長の大波を経験してる。
ベースアップが数万円の経済成長の時代だけに、営業しなくても、お客は増えた。
顧問料も最低でも月額5万円の良き時代を経験してきた世代が、引退を迎えている。
そんな事務所を承継した税理士には、月額5万円以上の顧問先が離れないかとの不安もある。
昨年引継ぎを行った事務所での話。
代表者が本気で言う、「(事務所を引き渡す)先生の信頼が厚い顧問先ほど、顧問料が高い。」
「そんな顧問先をわが事務所の職員の中で、値下げを打診され、断れる職員は極僅か。」
前の先生と同額の顧問料を払ってもらえるのだろうか?と、大いに不安になる。
しかも、税理士が直接顧問先を訪問し、”ご機嫌取り”することも歳とともにしなくなっている。
こうなると、事業承継の引き継ぎ交渉の際にも、顧問料の高さにどうしても目が行ってします。
仕事の内容が顧問料に見合っているのか?
税理士ではない職員が担当しても、値切られることは極力避けたいところ。
でも、自分の事務所が行っている同じ業務をみれば、顧問料の違いは明らか。
そう、顧問料が高過ぎるのだが、これを簡単に値下げを許したら、コストパフォーマンスは最悪。
経営の面から考えれば、値下げは一瞬で決まるが、値上げはなかなかできない相談。
それだけに、顧問料が高い古い先生の事務所を引き受けるには、相当の覚悟が必要になる。
事業承継支援室長
大滝二三男