数年前、ある地方の税理士さんが病に倒れ、事業承継を決意された。
交渉役に立ったのが、専従者になっていた所長婦人。
毎日午前中は事務所の仕事をチェックし、午後は所長の入院先に。
所長が倒れるまでは、総務を担当する程度では、実務の管理経験は無し。
そんな状況で、事業承継の交渉役という大役に戸惑うことに。
仲介役の支援室のメンバーが、その経験をもとに熱心に゛指導゛。
交渉が進むなかで、所長の判断が必要になるが、面談が許されない。
はたして、奥さんが交渉内容を正確に伝えられているのか?
そんな不安のなかで、引き受け手の要求も厳しくなっていく。
事務所の実情が正確に掴めない受け手は、推測のみで条件提示。
売上に対してはかなり低い評価に、奥さんも気が気でない。
その内容を所長に話したというのだが、具体的な判断は示さない。
所長は、お客さんと職員が路頭に迷わなければ、それで良いと言う。
奥さんも業務が分からないので、引き受け手の条件は判断できず。
そこで、支援室で両者の条件や気持ちを擦り合わせ、評価を出した。
具体的な内容は省略するが、双方に提示した内容を納得。
この間、かかった期間は2か月余り。所長夫人は毎日病院に行かれた。
所長の看護から家に帰るのは、毎晩10時過ぎ。きつい毎日だったはず。
それにも負けず、交渉に心強く対応し、見事な交渉役を果たす。
当方も、これには頭が下がる思いだった。
引き継ぎがほぼ終わる頃に、支援室に奥さんから一通の手紙が届いた。
その内容は、支援室の丁寧な対応と公正な判断への礼だった。
当方としては、当然のことをしたまでだが、礼状は嬉しい限り。
今後も中立・公正な判断を戒める手紙として、改めて確認した次第。
事業承継支援室長
大滝二三男