国税OBの税理士事務所の承継には、伝統的な承継方法があります。
先輩の税理士から後輩の、それも同じ釜の飯を食った後輩に引き継ぐ方法です。
これまでは、先輩から引き継いだお客さんを、ほとんど無償で引き継ぐものでした。
というのも、肩叩きで退官した、その代償として顧問先を紹介してもらってきた歴史があります。
ですから、無償で手にした顧問先を後輩に無償で引き渡すのが、”礼儀”というものでした。
無償で手にした顧問先から数年間、それ相当の顧問料を手にしていた税理士が引退。
それを後輩に承継するのは、”常識”となっていたわけです。
ところが、数年前から退官する”厚紙上級職”への、顧問先のあっせんが無くなりました。
つまり、タダで顧問先を手にする方法がなくなってきたわけです。
そうなると、退官したものの先輩からの承継ができなくなった税理士はどうするのでしょう?
承継する対価を支払いたくない税理士は、承継を諦めるしかありません。
同時に定年に近い年齢で退官した税理士には、営業する”元気”はほとんどないでしょう。
こうなると、事務所を閉鎖し、承継する税理士に何らかの対価を要求することも難しくなります。
しかし、斡旋された顧問先からの収入だけで事務所を運営することは出来ません。
当然、60代前半で退官した人でも営業に力を入れ、それ相当の事務所を作り上げた人もいます。
その努力の結果をタダで後輩に譲るといった奇特な人は、そういません。
ご自身の退職金として、対価を手にする、そうあるべきでしょう。
確かに、ここ数年、OB税理士からの相談が増えています。
それも、仲間の税理士に譲り渡すのではなく、試験組の元気な若者に渡したいという案件が。
良い傾向ではないでしょうか。”国税一家”が独占できる仕事ではないのですから。
そして、税理士事務所の仕事も、税務オンリーでお客さんがついてくる時代でもありません。
お客さんの経営をサポートできなければ、事務所としての繁栄はない時代になっています。
事業承継支援室長
大滝二三男