大手生命保険会社が、税理士の協力で上場まで至ったのは業界では有名な話。
当時は第三の生保にしか過ぎなかった企業が、今では全国各地にビルを所有。
そこには税理士会や法人会などの税務関係団体が、事務所を置いている。
この40数年にして、ともに利益を享受し、切っても切れない関係にある。
そんな常識から一線を画し、一切の生命勧誘業務を禁じている税理士事務所もある。
経営者にもしものことがあった場合のリスクヘッジとして、生命保険を無視することはない。
ただし、財務内容などが分かっている税理士が、生保を勧誘することを良しとしない。
職員が生保の営業に熱心になるばかりに、無理やりキャッシュフローにまで手を突っ込む。
そういった行為自体を戒めるためにも、職員に生保の勧誘をさせてこなかったという。
同時に相続に関しても、相続人間の醜い争いを若い職員に見せることがはたしてどうなのか。
しかも、相続財産を、あらゆる角度からみて正確に評価できる職員がいない。
所長自体も相続に関する業務には、将来のリスクを考えると、積極的にはなれない。
その結果、相続案件が生じても、「うちはできません!」、専門の税理士に頼んでください。
そんな邪険な対応でも、一生で一度か二度のことで、日ごろからの付き合いをやめる顧客もいない。
「相続が苦手なら、その専門家に頼もうか。その方が安心だな」と、顧問税理士の紹介でプロへ。
ところが、来年の相続税大増税を前に、「うちの事務所でも、積極的にやらなきゃあ!」
こんな声が聞かれるようになってきた。
そう、もう「うちは相続はやりません」と、言っているわけにはいかなくなってきたのです。
自らの事務所の事業承継を考えている先生には、改めて相続業務をやるのは大変です。
それでも、相続の相談に乗れない事務所では、まさに淘汰される対象になるでしょう。
評価の間違いなどを考えると、なかなか積極的にはなれませんが、でも避けては通れません。
そう、もう個人事務所、先生一人で税務だけでもすべてを判断する時代ではなくなっています。
ますます、税理士事務所のオーナーとして、マネジメントを考えなければいけない時になっています。
実務だけに魅力を感じる先生は、経営の第一線から退き、プレイヤーとして歩く時かもしれません。
事業承継支援室長
大滝二三男