よく言われるのが、息子や娘が帰京した折に、父親の税理士が”廃業宣言”するという。
子供たちには、親の仕事を継いでいるわけではないので、言うこともないだろうと思うのだが。
奥さんの了解を取るというのなら当然ですが、どうしてか、子供たちの了解も取るというのです。
そうすると、「まだ元気なんだから、もう少し仕事を減らして、頑張れば!」という答えが返ってくる。
これを待っていたかのように、「そうだな、辞めてしまうとボケちゃうからな」、そこには笑顔が。
それで話はチャンチャン。その後は孫の話で盛り上がる。娘さんは婿さんの愚痴を母親に。
でも、こんな話は数年前までのこと。
今は、「親父さん好きにしろよ。のんびりして、母さんと旅行でも行けばいいじゃないか」
こんな物わかりのいい息子だったかと、初めて気づくこともあり、息子も後を継がない弱みもあるのか。
資格ビジネスであり、資格がなければ所長になれないし、サラリーマンでいい位置にいればそれも結構。
さらに、毎月のように従業員の給与の心配などしたくもないし、気楽にやりたい人には後継は無理。
そのうえ、経営の苦しい零細企業の顧問先に資金繰りなども相談に乗り、それも顧問料の一部とか。
少ない顧問料の中には、人生問題の話し相手になる”手数料”も含まれ、規定外の業務も多い。
顧問先が成長企業であればその相手も楽しい。将来的に大きく伸びると思えば、話に力も入る。
結果として、上場を果たせば、顧問先から離れていくが、それも実績として誇りに思う。
そんな夢を一緒に抱くことができる顧問先を持てる税理士は、今の時代はごくごく少数。
監査法人から独立した税理士が、上場企業の孫会社の顧問となり、その会社が上場する。
そんな事例以外では、そんな経験ができる税理士はほとんどいないはず。
もちろん、子供が里帰りするような地域で開業している税理士には、夢にも出てこない話。
それこそ、都会で気楽なサラリーマンの息子の会社が、ひょっとしたら上場企業になるかも。
そう、今月は孫を連れて里帰りする子供たちと、自分の将来を語るときでもあるんですね。
9月になれば、年末あるいは新年をめどに、事業承継の実務も始まります。
事業承継支援室長
大滝二三男