税理士事務所のオーナーは、いつまでたってもオーナーのまま、そのうち廃業。
企業として考えることはほとんどなく、個人事業として、一生を終える。
平成10年でしたか、税理士法人制度で、ゴーイングコンサーンの道筋ができた。
それでも、同族企業と同様に、身内だけが役員となる税理士法人が続々と誕生。
一般企業であれば、親から子へ、そして孫へと事業を引き継ぐことは障害なくできる。
しかし、税理士事務所は、国家試験に合格した税理士がいなければ成立しない。
ここが資格ビジネスの辛いところで、多くの税理士事務所が後継者問題で躓くわけ。
しかも、国税職員 の資格の取得と比べ、一般ははるかに難しい試験をクリアする必要がある。
言ってみれば、落とすための試験に合格するための、税法の理解と”技術”が必須。
若い頭で、同時に”試験頭”がなければ、そう簡単には高いハードルを越えることはできない。
事務所を経営する税理士として、家族で資格をクリアする子弟が出れば、万々歳。
大学院に行って、税法や会計科目の一部を免除されても、資格を取ることが最終目標。
いつまでも試験にこだわるより、免除を受けられるのであれば、その方が時間はかからない。
顧問先の社長さんたちも、長年付き合ってきた先生の子弟が税理士になれば、これまた安心。
親父さんと同様に気心の知れた付き合いができるのだから、これまた大歓迎だ。
しかし、そんなお子さんもいないという先生の場合はどうだろう。
よく聞くのだが、自分の子供は方面違いの職に就いたので、職員の子供に目星を付ける。
その職員も事務所開設の当時に、一緒に苦労した間柄であれば、なお結構。
職員の子供ゆえに、所長も安心して任せられるというのだ。
本当にそうだろうか?
番頭さんを長年務めてきた人の子供が税理士として、父親と同じ職場につくことはどうだろう?
親父さんは無資格で、税理士の下で安月給で働き続け、その怨念はいかがなものだろう。
過去に、地方の大規模事務所の番頭さんが、娘が資格を取得すると、すぐに事務所を退職。
娘の事務所に勤めるのだが、自分が担当していた顧問先を残らず持っていた事例がある。
しかも、娘のゴッドファーザー(名付親)は、父親が長年勤めた事務所のオーナー。
そんな間柄でも、恩を仇で返すこともあるのです。
そう、だれかに任せたい、自分で育てよう、なんて考えるより、専門家に任せるほうが良いでしょうね。
多くの人が、もう一歩踏み出せない。それが本当のところでしょうね。
事業承継支援室長
大滝二三男