今から40年以上前に税理士試験に合格し、今まさに引退の時期を迎えている老人の声です。
当時は高度成長期、試験に合格すれば、お客が増え続け、収入も倍増の時代でした。
戦後(?)のもののない時代に幼年期を過ごした若者たちが資格を取得し、胸を張って船出をした時期です。
日本復興と経済成長に誰もが浮かれた時期でもあり、知らぬ間に財布の中も増えた時代。
サラリーマンの給与もベースアップが数万円の時代ですから、資格を持った人は万々歳。
税理士も何もしなくてもお客が増え、それだけに税理士試験の挑戦する若者も急増した時代。
それ以上に上昇志向の強い若者たちは、弁護士を目指し司法試験に、そして公認会計士の試験に。
税理士に挑戦する若者は、日商の簿記一級をとり、また大学生も科目合格をめざし、サークルで受験勉強。
さらにサラリーマンや税理士事務所に就職した人も、勤務が終わってから、日夜独学の試験勉強。
家庭を持ったサラリーマンも夕食を済ませた後は、夜遅くまで受験勉強。合格までは遊びなし。
赤ん坊の生まれた後も、奥さんにすべてを任せ、何はともあれ、合格のために一心不乱。
試験合格のための予備校もない時代、大学のサークルでは模擬試験もどきはあった。
しかし、テクニックを教えてくれる予備校はまだない時代だけに、とにかく税法の基本を徹底的に覚える。
過去問題を自分なりに理解し、とにかく覚えるのみ。
テレビの時代に入っても、試験勉強を理由にスイッチオフ。子供たちも仕方なく、おやすみなさい。
今は、「そんなことをしたら、家庭内で総スカン。しまいには離婚ですよ。」
そう言っているうちは、試験には受からないのが今の時代。ともかく、試験そのものが難しくなりました。
お父さんの時代の試験と今の試験を比較すると、当然今のほうが数段難しくなっています。
それだけに、「昔は必至でやったもんだ」なんて、若者があたかも手を抜いているように言うのは?
それこそ、昔は遊ぶものも少なかったし、合格すれば明るい前途があったものの、果たして今は?
不況業種になっている税理士業界で、独り立ちしていくのは本当に大変だと思います。
もう時代は変わりました。個人で税理士事務所を経営していく時代ではないのでしょう。
事業承継支援室長
大滝二三男