顧問先に余計な心配を掛けたくない。だから、一切話をしないという税理士が圧倒的。
ところが、先生が話もできない、回復の見込みもない、こんな場合はどうか?
先生の家族の立場からすれば、病気の先生の看病で精一杯。
事務所のことまで気が回らない。その間は、税理士不在で、仕事は職員任せの状態。
顧問先に話したくないという先生からの指示があれば、当然職員にも中途半端な話で終始。
なぜなら、職員の口から顧問先に病状が語られ、顧問契約の解除となってしまう恐れもあるから。
でも、職員の立場にすれば、先生が現役復帰できなければ、事務所は閉鎖され、失職。
一日も早く、しっかりとした対応をするよう、先生の家族に要求することもある。
数年前の確定申告時期に、ある地方の先生が脳梗塞で倒れ、税理士がいない状態に。
その時は、支部が相互扶助制度のもとで、3人の若手税理士が事務所の業務を分担。
数か月後に先生の復帰が困難ということで、顧問先を分割して若手税理士がそれぞれ顧問契約。
その際、3名いた職員のうち一人だけが、引き受けた事務所の職員に採用されたにすぎなかった。
そんな状態にはなりたくないというのが、職員の本音。
でも、先生の家族は先生から口止めをされているので、話したくても話せない。
先生の信頼するナンバー2がいる事務所であれば、家族と”所長代行”が業務を円滑に進められる。
しかし、ほとんどの事務所が、文鎮スタイルの業務体制を取っている。
命令系統は、先生から職員各人に個別に行われ、他の職員にはその内容は分からない。
従って、先生が不在の状況では、その指示する人がいないので、事務所内はバラバラ。
そんな時に先生の病状をはっきりさせれば、まさに”泥船”から逃げ出すような人も出てくるだろう。
ここで、家族がしっかりと事務所内をまとめるようにしない限り、事務所は”空中分解”してしまう。
手を打つのは早いほうがいい。先生の病状によって打つ手も変わってくる。
よき理解者を事務所内にしっかりと確保していないと、とんでもないことになります。
そう顧問先には、打つ手がはっきりしてから話をすべきでしょう。急ぎすぎてはいけません。
事業承継支援室長
大滝二三男